奈良県内の政治経済情報を深掘

2022.8.1掲載  社説「時々刻々」

〝先進地〟の議論が必要 県議選1人区の多さ

論説委員 染谷和則

 来春の統一地方選の県議選(定数43)に向け、現職、新人らの動きが活発化してきている。奈良県の選挙区は16あり、このうち1人だけが当選する選挙区は4つもある。これは人口規模が似ている隣県に比較して多い。隣の三重県は17選挙区あり1人区は2つ。滋賀県は13選挙区あり1人区は1つだけだ。
 奈良県の市町村数は39。三重県は29。滋賀県に至っては19しかない。全国を見ると、最も合併が進まなかったのは大阪府、次に東京都、神奈川県、北海道、そして奈良県と続く。大都市圏を抱える都道府県の中で、合併が進まなかった奈良は特異。多くの基礎自治体が残る。その基礎自治体の人口は少ない上に年々減少している現状。1人区が多いのはこれらの背景がある。
 これら合併しなかった奈良は「違う形」のスケールメリットを見出そうと、ごみ処理の基礎自治体の連携をはじめとした「奈良モデル」の推進や、今号で報じた中和・西和地域の7自治体が取り組む公共施設の共有化の実証実験などで管理運営コストを下げ、人口減少時代の自治体のあるべき姿を模索している。
 宗教団体と政治、政党との結びつきが連日クローズアップされている。国政であろうが、地方行政であろうが、政治家になるには票が必要。衆院選を見ても、小選挙区で戦う以上、地方の1人区は巨大な組織力がある政党が有利になりやすい傾向だ。長い月日を経て「切っても切れない」関係ができあがってしまう。
 公職選挙法15条1項~4項では、都道府県議の選挙区について、市の区域や隣接する町村を基本とし、条例で定めるとしている。都道府県議選も政党色が濃く出る選挙戦。各種団体の結びつきがあり、組織力のある政党の候補が有利になりやすい。特に1人区はその傾向が強くなり、これだけ1人区が多い奈良の土壌は変化が起こりにくい、また新人の挑戦には大きな壁があるとも言える。
 県選管によると、公選法の定めがある以上、例えば衆院県1~3区でそれぞれ15人を選ぶなどの選挙区の見直しはできないと話す。しかしながら、合併が進まなかった奈良は今後、他の都道府県よりも加速的に1人区が増加する可能性がある。県議を選ぶ選挙区について、〝先進地〟としての議論が必要ではないか。


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