奈良県内の政治経済情報を深掘

2022.7.25掲載  社説「時々刻々」

礼を失した三県議会交流会議、欠席の県議長に猛省促す

論説委員 寺前伊平

 16回目を迎えた紀伊半島三県議会交流会議が、五條市の県五條総合庁舎で14日開かれた。開催県の奈良県議会から西川 副議長を含めて計7議員が参加した。1日の役員改選後初の対外的な会議の場に、岩田国夫議長の姿がなかった。
 交流会議は毎年この時期に和歌山、三重、奈良3議会の開催地持ち回りで開く。開催県の議会議長が交流会議の議長を兼ね、議事進行を行う。当の岩田議長が欠席している理由説明が一切ないまま、同じ会派の西川副議長が岩田議長に代わって会議を淡々と進めた。
 開催地となった五條市には、将来起こりうる「南海トラフ」巨大地震を想定し、紀伊半島をカバーする防災拠点がないため、県が昨年6月、同市内に整備する「大規模広域防災拠点」の在り方や導入すべき機能、施設規模など基本的な考え方を取りまとめた「整備基本計画」を策定した。
 先月にはこの大規模広域防災拠点が、国の「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」に位置付けられた。これを受け荒井正吾知事は、和歌山、三重両県とさらに連携を強め、国の支援を得ながら整備を進めていく方針だ。
 県行政と県議会の両輪で、まさに強力に推し進めていくべき機会に、交流会議の席に県議会議長の姿がないのはいかがなものか。当然ではあるが和歌山、三重両県とも正副議長が参加する中、大規模広域防災拠点への関心を示す質問が際立った。それだけに、「岩田議長欠席」について議員から口外はなかったが、妙な空気が会場を覆っていたのは確かだ。
 2年後は世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」登録20周年を迎える。翌年には大阪・関西万博開催など大きな行事が待ち受けている。コロナ禍だからこそ、観光振興面でも三県が連携していく必要がある。そんな時に礼を失しては、元も子もない。
 松下電器産業(現パナソニック)を創設した経営の神様・松下幸之助氏は生前、どんな場合であっても礼を欠くような態度を厳に戒めていた。「礼を尽くす心は相手に必ず伝わる」と。
 交流会議終了後、地元の太田好紀・五條市長が「おもてなしの心」を込めて、手提げ袋に入った特産のハウス柿を事務方も含めて計40人分を用意。帰り際、土産物として手渡されていたことが、せめてもの救いである。


menu
information