奈良県内の政治経済情報を深掘

2022.4.11掲載  社説「時々刻々」

内需を高める観光確立 「いまなら。」を機に今こそ

論説委員 染谷和則

 コロナ禍前、令和元(2019)年の県内を訪問した延べ観光客数は4502万人だった。県がまとめた直近のデータがある令和2(2020)年は計2623万人、対前年比41・7%の減少になっている。
 県内を東西南北4つのエリアに細分して対前年比を見ると▼北部58・7%減▼西部37・5%減▼東部30・2%減▼南部33・9%減になっており、奈良市を中心とした〝定番〟の観光はインバウンドの大幅減少の影響を大きく受けていると見られる。
 その一方で、東部や南部の落ち込みは30%台でとどめられている。北部への訪問観光客数は667万人、南部は246万5000人と、倍以上の差があるものの落ち込み数が少ないのは、国内のコアなファンが一定数いると推察できるのではないか。
 県は15日から、県民を対象に県内の宿泊施設を割引価格で旅行できる県独自の観光需要策「いまなら。キャンペーン」を開始する。コロナ禍で落ち込んだ観光や飲食の需要を高め、県内の内需喚起を目指す。
 県内の人口や経済は「北高南低」と言われて久しい。さらに奈良県民は、経済活動のほとんどを大阪府に依存しており、大阪府で働き、休日の買い物やレジャーなども大阪府へ足を運び消費する。ベッドタウンとして発展してきた奈良の特性は今なお続いている状態だ。
 京奈和自動車道の整備が進み、北部から南部への移動時間は大幅に短縮され、ハード面での整備は整ってきた感があるものの、南北の県民の往来はまだまだだ。人を動かすソフト面の整備は難しい。動線を作っていくためには魅力的な点をPRしていく必要がある。
 新型コロナの影響を受けて、海外旅行はもちろん、県外遠方への旅行などは難しい状況がある。 近場で楽しむ旅行の需要は高まりつつあるこの機に、また「いまなら。」のキャンペーンを通じて、北部の県民が南部や東部、西部へ足を運んだり、双方向の経済効果が生まれるきっかけにすべきだろう。
 これら動線を作るのは何も県の仕事だけではない。各市町村がより関係を密にしていくことが重要。近隣市町村の枠組みだけでなく、特に遠方市町村と互いの観光資産を共有することや、歴史や文化のつながり、縁を模索するなど、検討してく場や会議の創設に期待している。

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