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2022.3.7掲載  社説「時々刻々」

就職活動が本格的稼働 昨年から一転「売り手市場」に

論説委員 寺前伊平

 来年春に卒業予定の大学3年生(院生)らを対象にした企業の採用説明会が、1日に解禁になった。早速、関西でも学生の就職活動が本格化している。
 就職情報大手のマイナビは1、2の両日、大阪市内で400社強の企業が参加する説明会を開催。2日間で約6000人の来場者があったという。新型コロナウイルス対策で事前予約制とし、説明会の動画をオンラインでも配信した。
 企業の採用意欲は「回復傾向にある」というのが大方の予想。というのも、就職情報会社ディスコの1~2月の調査によれば、学生の採用見込みが前年の同時期より「増加」した企業が26・6%、「減少」の6・0%を大幅に上回っていることからも分かる。
 新型コロナの影響もあり、採用を縮小した昨年から一転、学生優位の「売り手市場」になるとの見方。政府主導のルールでは「3月に説明会などの広報活動解禁、6月に面接解禁」となっているが、この分だと面接を解禁前の3月中頃、内定出しを4月下旬に始める企業が出てきそうだ。
 県内でも今月11日、県コンベンションセンターでジョブカフェ主催の就職応援フェア「合同企業説明会」が開かれる。県内の15業種約100企業が参加して対面式で行われる予定だ。同時に県内企業で働く若手社員の声が直接聞ける、県主催のセミナーも開かれる。
 中小企業の多い県内にあって、小さくてもキラリと光る業績、業務内容を持つ企業も少なくない。学生にとっては、企業の処遇や仕事の在り方、社風などを肌で感じることができる絶好の機会である。企業とて、多様な人材を確保するためには、さまざまな質問に丁寧に答えることができるかどうかが正念場だ。
 ただ、経団連などが最近発表した昨年3月卒の「新規学卒者決定初任給調査」の結果を見ると、「前年の初任給から引き上げた」企業の割合は29・9%(前年比12・7?減)で、3年連続の低下。また「前年の初任給を据え置いた」企業は69・6%(同12・2?増)に及んだ。
 学生は初任給も気になるところだろうが、何よりも入社して魅力ある企業と思えるかが第一。今年の就活は「売り手市場」の前倒し傾向にあることは否めない。企業の将来性と学生の能力・人物像がどのような形で一致をみるのか、応援したくもなる。

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