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2022.2.28掲載  社説「時々刻々」

北京五輪が残したもの 遠のく平和の祭典

論説委員 染谷和則

 北京五輪が閉幕し、日本は冬季五輪で最多になる18のメダルを獲得した喜びの一方、さまざまな疑惑や憶測を呼ぶ判定や政治利用など、大きく公平性を欠いた大会になってしまった。各国からIOCへの批判が噴出している。「平和の祭典」の理念はどこへやら。
 IOCは終始、開催国の中国賛美を繰り返した。その一方で、大会終了後、各国の選手らが帰国して安全を確認してから口を開き始めている―。
 男子スピードスケートで2つの金メダルを獲得したスウェーデンのニルス・ファンデルプール選手は帰国後、人権侵害が指摘されている中国での五輪開催を決めたことを「明らかな人権侵害をしている中国政府に(開催権を)与えるのは、非常に無責任だ」とIOCを批判した。
 フリースタイルスキー男子ハーフパイプで、現役引退を表明して競技に臨んだイギリスのガス・ケンワージーはIOCを「拝金主義」と批判した。またIOCの組織に対しては「良心があるとは感じられない」とコメントし、痛烈に批判している。
 大会開催前から、人権侵害について欧米諸国が中国を批判。外交的ボイコットを行った。中国は大会組織委員会の報道官が、新疆地区のウイグル族が人権侵害を受けているという主張はうそだとわざわざ記者会見で述べ、五輪に政治問題、外交問題を持ち出した。五輪と政治の距離感はゼロセンチになっていた。
 競技のジャッジをめぐっても問題が続出した。韓国が中国とIOCに対して異を唱えるなど、今後の外交的火種になりつつある。スポーツである以上、審判の判断に口を出すことは競技の根底が崩れてしまうが、こちらもきちんとした見直しやルールの明確化が必要だろう。
 中国の祭典だったとも揶揄(やゆ)される北京五輪。アスリートファーストの競技であり、決して国家間の競争や争いではないはずの五輪が、もはや崇高な理念とは乖離していることを世界中が目にし、それを露呈した大会になった。
 平和の祭典の意味を、原点を見つめ直し、五輪開催が各国の外交的な火種になることのないよう早急な改善を求めたい。公平や公正が担保されない大会は観ていられるものではない。IOCと中国が今大会で残した課題はとてつもなく大きいものではないか。

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