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2021.11.22掲載  社説「時々刻々」

非課税、領収書なしの文通費 法改正と政治活動の見直しを

論説委員 寺前伊平

 国会議員に支払われる歳費以外に、文書通信交通滞在費(文通費)というものがある。国会法、歳費法で規定されているが、月に1日でも在職していれば、1カ月分満額100万円が受け取れる。
 先月31日投開票の衆院選で初当選した新人議員らに、10月分の文通費が満額支給された問題で、今回選挙で大躍進した日本維新の会が「待った」をかけた。早速、新人議員の文通費を全額寄付する方針を決め、それに自民、公明が呼応した。
 いきなり与党は「在職日数に応じた『日割り支給』に改めるべきだ」との考えを示したが、いささか虫が良すぎる感が強い。他の野党も、法改正の法案提出には賛成の姿勢で、12月上旬に召集予定の臨時国会での法改正に向け、与野党の協議が行われそうだ。
 それでは、なぜ今まで文通費について本腰で議論してこなかったのか。極論からいえば、国会議員にとってこれほど使い勝手のいいお金はないからだ。使途報告や領収書の公開、余ったお金の記載がいらない「渡しきり」のお金で非課税である。
 衆院議員の歳費は月に約130万円。党費やいろいろな部会の会費などが天引きされ、半額に近い月60~70万円程度となることが多い。たとえば、東京と地元との二重生活を余儀なくされている奈良選出の各議員を例にとるとこうだ。
 今はコロナ禍で縮小、中止されていることが多いが、奈良に帰ると新年会、祭り、各種会合・イベントなどで5000円から1万円の会費が必要で、1日に3、4回〝はしご〟するのが普通。領収書なしで使える文通費はありがたい存在である。
 加えて、大学生の子どもの学費に充てられているケースもよく聞く。これが、〝第2の給与〟と言われるゆえんでもあり、一方で「これだけお金がかかるのなら、なりたくてもなりたくない」と、ささやく国会議員志望者の声もある。
 そうみると、文通費は経費としての性格が強い。税金がかかり税務署から目を付けられる。余ったお金は、国庫に返還するのが通常である。ただ、現行法の文通費は使途目的が明文化されていないことで、罰則規定もない状態が続いている。
 もともと文通費は、非課税で領収書がいらないところに問題あった。にもかかわらず、知ってか知らぬか皆が頬かぶりしてきたところに、なお大きな問題として影を落とした。この機会に、法改正とともに政治活動の在り方自体も見直すべきではないか。
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