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2021.10.11掲載  社説「時々刻々」

ワクチン接種とともに衆院選へ コロナ対応、経済対策に耳を

論説委員 寺前伊平

 自民党の岸田文雄首相になって初の衆院選挙が、あす19日に公示される。およそ1年8カ月にわたるコロナ禍にあり、急速に感染が減少してきた中ではあるが、ワクチン接種に関わる不手際などが伝わる度に、まだまだ不安はぬぐい切れない。
 31日投開票の衆院選挙を急いだのは、野党の準備が不十分な間に、選挙をより優位に進めたいとする岸田首相の思惑が見え隠れする。3新人のコロナ関連閣僚に対して、予算委員会において野党からの追及の矢面から、逃れようともくろんだとも推察される。これまでの新型コロナ対応やそれに関わる経済対策のもろさが、岸田内閣発足時の支持率の低さからも見て取れる。新しい3閣僚が十分に説明責任を果たせるかといえば、不安材料の方が多かったに違いない。
 確かにワクチン接種率からすれば、すでに米国を抜いたかもしれない。ただ、コロナ禍で儲(もう)かっている企業が多くある一方で、本当に資金繰りや日々の生活に困っている飲食店などや個人に対して、迅速に給付金が支払われてこなかった例も数多い。
 そのために廃業に追い込まれた中小企業・小規模事業者や、行き場を失っている人を救えないでいるのも事実。給付金を送付するまで何段階も手続きを踏まなくてはならない。担当者は手続きを踏み外さないようにと慎重に進めるあまり、余分な時間を取らされている。いまだに最先端の技術が使われていないところに、大きな問題があると言わざるを得ない。
 県出身の衆院議員、高市早苗・自民党政調会長が発表した党の公約の中で、県民が関心を寄せるいくつかの項目がある。その一つが「中小企業・小規模事業者を応援する」こと。もう一つは「国の基『農林水産業』を守り、成長産業に」というものだ。前者は、事業承継の際に個人保証を引き継がない「個人保証ゼロ」に向けた施策を実行することを挙げている。後者は食料自給率・食料自給力の向上に役立つ対策の強化と合わせ、担い手の育成と確保や農地の集積・集約化を進め、生産基盤の強化を図ることを盛り込んでいる。
 いずれも、県が抱える喫緊の課題に踏み込んだものだが、各党とも現実を視野に入れながら、より具体的な公約を有権者に発信してもらいたい。街頭で立ち止まり、候補者が発するコロナ対応、経済対策の声に耳を傾けてほしい。
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