奈良県内の政治経済情報を深掘

2021.9.13掲載  社説「時々刻々」

新庁発足の意義とは 行政デジタル化を加速せよ

論説委員 寺前伊平

 デジタル庁が今月1日に発足した。世界から見ると、アナログ国家のまま衰退の瀬戸際に立つ日本だが、行政デジタル化の推進は病院、学校、家庭、ひいては地域経済にも波及させる大きなチャンスだと受け止めたい。
 日本で行政デジタル化が進まなかったのは、長く続いてきている「押印文化」が根底にある。ただ、マイナンバーカードの普及取り組みにより、個人情報を政府がデジタル管理することへの道が開かれようとしている。
 これによって、銀行口座、携帯番号、通勤・通学先などでオンラインにより行政手続きができ、自宅プリンターで行政書類を手にすることができる。コロナ禍での中小企業の給付金申請を例にとると、事業者登録番号を入力すれば、金額が表示され「確認」欄を押して、わずか5分で終了。金額は納税額などの情報から事業者ごとに算出される。
 行政デジタル化で世界をリードしているのは、北欧のデンマーク、エストニア、フィンランド、スウェーデン。順に1位、3位、4位、6位。65歳~74歳のネット利用率が94%に達しているデンマークの場合、個人番号、電子私書箱、銀行のネット口座を持つことが義務付けられている。
 このため、公的機関からの連絡はメールで電子私書箱に届く。給与、社会保障の受け取り、納税はネット口座を通じて行われる。大半の手続きがオンライン化されている。  ランキング2位のデジタル先進国はお隣の韓国。米国は9位、日本に至っては14位と取り残され感が強い。韓国では、ほぼ全ての個人情報が政府によりデジタル管理されているという。
 菅義偉首相は、デルタル庁を司令塔にして▼行政のデジタル化▼医療や教育など幅広い分野のデジタル化▼年齢・地域・経済的状況などによらず全ての国民が情報にアクセスできる社会―の3本柱を挙げ、デジタル改革推進を指示している。
 奈良県においても、今年度当初と前年度2月の補正とを合わせて約6億4000万円を予算化。行政事務のデジタル化とともに▼南和地域でのICT(情報通信技術)を活用した地域リハビリテーションの推進▼南部東部地域での同時双方向型授業の展開▼「奈良まほろば館」新拠点での新型展示会開催―など、デジタル化へ一歩踏み出した。
 「スマートフォン一つで手続きがオンラインでできる社会を目指す」と豪語した菅首相ではあるが、17日告示、29日投開票の自民党総裁選には不出馬を表明した。デジタル化のかじ取り役トップを誰に委ねるのか。
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