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2021.6.21掲載  社説「時々刻々」

橿原市議会の果たす役割とは 良識問われる新スポーツ拠点整備

論説委員 寺前伊平

 地方行政を進める上で首長と議会は「車の両輪」だと重要視されてきた。同じように「是々非々」という言葉もよく使われてきた。なんとなく「死語化」しているようにも思えるのだが、肝心かなめの時に活かされることもある。
 早稲田大学マニュフェスト研究所が、全国1788議会に対して行った「議会改革度調査2020」において、「議会機能強化」の部で、宇陀市議会が295位にランクインした=本紙既報=。
 思い返せば、市長と市議会が正常な形を取り戻したのは、1年前の6月議会からだった。2年にわたって重要案件で当時の市長と議会の歯車が全く合わなくなり、一人の職員を自死にまで追いやってしまったのだ。
 議会で不信任決議案を可決。当時の市長は伝家の宝刀を抜き、議会を解散してしまった。その後の市議会選挙で、当時の反市長派が不信任決議案再可決に必要な議席を獲得。臨時議会で当時の市長は失職した。出直し市長選で返り咲きを狙った前市長。現市長にダブルスコアの差を付けられて敗れ去ったのである。
 自治体のトップは、政治信条の下で譲れるところと譲れないところを持ち合わせている。それでも、全体を精査して柔軟に対応できる能力が必要条件である。同じ方向に船を漕(こ)いでいくには、議会との十分なコミュニケーションがとれていないとできない。やはり「車の両輪」である。
 10年後の令和13(2031)年に県内開催が内々定している国民スポーツ大会(国体)・全国障害者スポーツ大会。県立橿原公苑と橿原市営橿原運動公園を一体とする新しいスポーツ拠点整備について、すでに県と橿原市は連携して協力していくことで覚書を交わしている。
 その覚書には「一体整備を具体的に進めるには、双方(県議会と橿原市議会)の了承を得ることが条件」の一文がある。県議会の南部振興議員連盟は一早く、「大会主会場となる施設を、南部・東部地域の中心地である橿原市に整備してもらいたい」と市長と議長宛てに要望書を提出している。これは、橿原市議会6月定例会で同問題の審議がスムーズにいくための事前の配慮ととらえたい。
 先の「議会改革度調査2020」で「情報共有」の部で196位となった橿原市議会である。今年2月の市議会選挙で女性議員が5人に躍進した。6月定例会では、女性議員の意見を共有しながら、新スポーツ施設の拠点づくりの論議を深めていただきたい。
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