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2021.6.14掲載  社説「時々刻々」

聞こえのよい議会改革 有権者は個の見極めを

論説委員 染谷和則

 任期満了に伴う大和郡山市長選(6月20日投開票)、奈良市長選と市議選のダブル選(7月4日告示、11日投開票)に向け、県北部の大和路は日に日に熱を帯びる。1人を決める首長選とは異なり、複数が当選する議員選挙は先の任期の実績が見えにくい。
 誰が何をしたか、何に賛成し、何に反対したか。これらを積極的に公開している議会もあれば、その逆もある。議員個人がどうしても見えにくくなる。これらの課題を受けて全国の議会は改革の旗印の元、定数の削減や報酬の削減をはじめ、議会基本条例の制定、政治倫理条例の制定などに取り組んでいる。
 早稲田大学マニフェスト研究所が調べた「議会改革度調査2020」は上位300議会を公表。奈良県では総合ランキングで奈良市議会のみが入った。同研究所はこのランキングの注釈として「議会改革の取り組みが進んでも、地域課題の解決や住民からの評価には繋がっていない議会があることも事実」としている。
 この結果をどのように見るか―。まさにそれは有権者が判断すること。上位に名前が入ってもその議会の議員の個の活動はなかなか見えない。とある市議会の市議は、市役所前に自ら運転する車を乗り付け、議会事務局職員に車椅子を押させている。どんな理由であれ、これは果たして職員が行うべき〝仕事〟なのか。
 またとある議会では、議会事務局職員に自ら行うべきルールになっている広報誌「議会だより」への原稿執筆を長年代筆させていたことも発覚した。挙句の果ては官製談合を主導して逮捕・起訴された議員もいた。議会の品位や品格はどこへやら…。これらの行為は、個ではなく、時に議会全体として有権者に見られてしまう。
 議会改革は報酬や定数の削減ばかりに目がいくが、議員個々の賛否態度をタイムリーに公表する、非公開の会議をなくすなど、今日、今からでもできる改革がある。またその一方有権者ができる議会改革は選挙でしかない。
 高度な議会への取り組み以前に、品行方正から求めねばならない資質の議員は、この選挙で「選ばない」ことができる。選挙戦になると聞こえのよい話ばかりを有権者に伝えようと各立候補予定者が躍起になるが、われわれ有権者は、各氏の日常をしっかり見極めねば改革できない。
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