奈良県内の政治経済情報を深掘

2021.4.26掲載  社説「時々刻々」

県政のコロナ対策二転三転 有事に頼りない政治力

論説委員 染谷和則

 大型連休前から県外ナンバーの自動車を見かける機会が増えたように感じる。あくまで主観だが、大阪、兵庫、京都の3府県に緊急事態宣言が発令されている中、この奈良へ訪れようとするニーズが高まる可能性はある。そんな中、県の施策は市町村を混乱させる後手後手と言わざるを得ない。
 4月末には衆参院の再選、補選は、北海道、長野、広島で投開票されたが、与党が全敗を喫する結果になった。この結果は、各選挙区独自の要因もあろうが、新型コロナによる大きな社会混乱、また経済的不安など、有権者の全てのフラストレーションが政権与党に向けられたと総括するのが自然だ。
 また政権与党に〝お灸を据えた〟という結果であれば、野党が勝ったとも言えない。政治への不信感と怒りが爆発寸前になっている。責任を取りたがらない政府、この状況下で開催しようとしている東京五輪をはじめ、有権者は政治そのものへの諦めや、ノーを突きつけている感すらある。
 県市長会、奈良市、生駒市、天理市、県内政党が、「緊急事態宣言」やそれに準じる「まん延防止等重点措置」を政府に要請するように県に要望し続けているが、荒井正吾知事はこれに消極的。誰が声を上げようと、聞かない。挙句はこの時期に「GоTоイート」のプレミアム付き食事券を発売し、混乱させてしまう始末。
 さらには、いち早く奈良市が独自に始めた飲食店に対する営業時間の短縮要請に乗っかる形で県は、各市町村が要請し、これに応じた事業者(飲食店)に給付する支援金や協力金と同額を出すと発表した。これも県が一方的に決めたことで、市町村への連携、連絡はなし。混乱が広がっている。
 県庁はとても大きい組織だ。常識を持って苦言や進言を呈した職員は数多くいるだろうが、これも聞き入れられていない。あまりにお粗末な施策だけが県民だけでなく全国に広まってしまった。市町村と密に連携して県勢発展を目指すという「奈良モデル」とは何だったのか―。
 有事の際こそ、本質が見える。また有事に頼りにならない政治など、有権者に必要とされていない結果はすでに出始めている。責任を取り、先頭に立って困難を打破するリーダーが今、求められている。 
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