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2021.4.26掲載  社説「時々刻々」

天川村のバイオマス利用に見る CO2排出削減の薪ボイラー可動

論説委員 寺前伊平

 県内の杉、桧の価格が著しく下がり、採算のとれない森林が増え続け、結果、そのほとんどが施業放置林になっていることに心が痛む。それが要因で、雇用が衰退していき地域活力が減退し、ついには定住も削がれていっている。
 そんな中で、天川村は木質バイオマスを利用した事業に力を入れてきている。森林組合、商工会、村―の3者で一般社団法人・天川村フォレストパワー協議会を設立し、旧天の川小学校屋内運動場に拠点となる、バイオマス生産供給施設を作った。  木材の扱いや薪の生産に伴う作業指導など全般については森林組合が担当。商工会は地域振興券の使用に伴う登録店舗(67軒)の管理や取りまとめと、使用された地域振興券の清算・換金を受け持つ。事業全般的な計画や運営については村役場が統括するという仕組みを構築している。
 このことで、一般村民の施業意識が上がり、就労の場が確保されるため、地域内での経済の循環へと働いていく。最終的には、薪ボイラーにより燃料費削減と環境保全のCO2排出削減効果をもたらす。
 出荷された木材は、体積で地域振興券の発行枚数を決定。1㍍に裁断されたものは立方㍍あたり5000円、それ以外のものは3500円。最大4㍍のものまで買い取っている。現在、木材の含水率を40%以下に乾燥させて、天の川温泉センターの薪ボイラーで使用している。
 第2弾として、洞川小学校跡地を利用した建物が完成、7月に開所する小規模多機能型居宅介護施設「もみじの里」でも、約3700万円の設置費用をかけた薪ボイラーが可動する。施設の給湯や「いこいの間」の床暖房用として使用される。
 「もみじの里」で薪ボイラー(80度で6時間燃焼)を使用燃料にすると、薪1日平均0・5立方㍍、年間41立方㍍使用することになり、かなりの燃料費節約につながるという。
 住友林業グループなどの大企業では、製材に適さない木材、森林に放置されてきた間伐材など、林地未利用木材を燃料用木質チップとして利用する「木質バイオマス発電事業」を展開中である。発電燃料を100%、再生可能エネルギーにすることを目指している。
 木材を燃焼することで放出されるCO2は、木の成長過程で光合成により吸収された大気中のCO2であるため、木のライフサイクルの中では大気中のCO2を増加させない。企業と自治体の取り組みの違いこそあれ、SDGsにある地球環境を良くする観点から、CO2排出削減効果に期待したい。
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