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2021.3.22掲載  社説「時々刻々」

市長選、市議選にらみ動き本格化 政局がらみの選挙はノー

論説委員 染谷和則

 奈良市の仲川元庸市長は、新斎苑建設地の用地取得費が高すぎるとした高裁の判決を受け、債権放棄の議案を市議会に出そうかと検討しており、前回市長選で仲川市長と戦った山下真氏(前生駒市長)は、この住民訴訟の弁護士として関与し、仲間と集会を開くなど現市政を批判。7月の選挙戦をにらんだ政局が本格化している。
 前回選の対立構図そのままの法廷闘争を経て、仲川、山下の両氏はまた市長選挙で相まみえるのか、そこに注目が集まる。知事選、奈良市長選と落選した山下氏が三度目の出馬を決断するかどうかは、流動的だが、両者が対立する選挙戦になるのは間違いないだろう。批判する山下氏側、事業推進のため正しい決断だったとする仲川市長。この高裁判決は市長選の大きな争点の一つになる。
 また県南部では、今年秋に予定されている市議改選を見据えてか、早くもヒートアップ。自民党籍の2人が数年間、議会事務局の職員を我が秘書のように議会が発行する広報誌の原稿を代筆させていた。市議会は厳重注意の処分を行うというが、職員らからは「処分が甘いのでは」との声も漏れる。
 本紙の複数に対する取材では、自民市議2氏に広報誌の原稿代筆を「頼まれた」歴代の職員らが、この作業のために休日出勤を行っていたり、残業をしたり、家に持ち帰ったりもしていたという証言がある。残業代や休日出勤手当が支給されたのかどうか、ここも大きなポイントだろう。
 国家公務員法第96条と地方公務員法第30条では、公務員の服務の原則として「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」と規定されている。市議に奉仕してどうするのか。そうしなければならない理由は何だったのか。強要や逆らえない側面がなかったか―。これらを調査すべきではないか。
 奈良市、五條市共にこれら政局や争いが、市政への発展へとつながればいいが、民衆を蚊帳の外にした内輪もめや政治対立に明け暮れるのにはうんざり。是は是、非は非を明らかにし、選挙で信を仰ぐほかない。政局で物事の本質が見えない選挙戦になることだけは勘弁願いたい。またわれわれ有権者は一つひとつの事象を見極めねば。
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