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2021.1.11掲載 社説「時々刻々」
伝染病に見る東京一極集中の欠陥 定住の受け入れに本腰を
論説委員 染谷和則
新型コロナウイルスの新規感染者が1日で6000人を突破するなど猛威を振るい、政府は首都圏の1都3県の知事が「国の責任で」と要望したことを受けて、緊急事態宣言を発令した。午後8時までの時短営業に応じない飲食店については店名を公表する方針といい、飲食店経営者からの反発がある。とかくこの混乱した世の中、政治や行政に対して不満は募るばかりだ。 飲食店への時短要請は、焼け石に水の協力金だけで強制的に行われるものの、湯水のごとく投資をして誘致した東京オリンピックは「中止」と言えない大人の事情があり、まだまだ意欲的。人口、経済規模が膨れ上がった東京都―。この一極集中のデメリットがコロナ禍で浮き彫りになっていると言える。 また一方、政治や行政不信の不愉快なニュースも。国が新型コロナ対応として地方自治体に配分した「地方創生臨時交付金」を使って石川県能都町は名産のイカを模した約13㍍もの大型モニュメントを3000万円を投じて作る。どうやら冗談ではないらしい。この町は本気でそれを作るようだ。われわれが支払った税金が新型コロナの対策として適切に、まともに使われているという感覚にはならない。同交付金が奈良県内でどのような使われ方をしているかも、調査する必要があろう。 このような〝情けない〟地方がある限り、一極集中型のこの国の構造はまだまだ続く。都市から地方への移住や定住の取り組みを国、自治体が積極的に行っていこうとすることは今後、伝染病流行のリスク分散につながり、国土の均衡ある発展にもつながると考えられるが、思考の停止した地方に光が当たるとは到底思えない。 わが奈良県は、今号で報じた通り、近畿2府4県のうちでは、和歌山県に次いで人口の減少幅が大きい。今、奈良市などが力を入れて取り組んでいるよう、新しい生活様式の中、人々の定住や移住の促進、企業誘致などに県と市町村が積極的に取り組むことが求められる。 違ってもイカなど作っている場合ではない。東京の膨れ上がった人口、経済を地方に分散する受け皿になるよう、今こそ次の10年をしっかりとデザインすべきだ。その青写真を示すことこそが、この困難を皆で乗り越える旗印だろう。
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