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2020.4.13掲載  社説「時々刻々」

官製談合の逮捕案件は氷山の一角 県警はすべての容疑の洗い出しを

論説委員 染谷和則

 新型コロナウイルスの感染拡大を止めるべく、政府が7都府県に「緊急事態宣言」を出した7日、五條市の現職市議と元職員(課長補佐)が官製談合の疑いで逮捕された。また談合で4業者の関係者4人も逮捕。このタイミングでの逮捕は至極残念でならない。本紙の取材では12月末には容疑がほぼ固まっていた。県警にはこの遅れを余罪の追及で挽回を期待したい。
 地方自治体の3月定例会は新年度の予算を決める極めて大事な本会議。県民、市民から預かった税金の使途を、公平・公正に執行していく道筋を付ける、1年間で最も大切といっても過言ではない。その場に堂々と逮捕された市議が議場のいすに着いていた格好だ。
 この市議は過去の一般質問で「市の財政が厳しい中、税金を無駄にしないように」と再三にわたって執行部に迫っている。その裏では、公金を食い物にする官製談合に関与。事件の舞台となったシダーアリーナの物品購入で逮捕された業者が落札した合計額は15件で9190万円に上るが、逮捕案件となった入札は2件で2562万7000円。まだまだ氷山の一角だ。
 逮捕された元職員は、議会が設置した調査特別委員会の調査・検証が進み始め、疑惑が続出し始めた昨年10月に依願退職した。同容疑者宅にはそこから何度も捜査員が足を運んでいる。捜査関係者や市役所関係者へ本紙は取材を続け、昨年12月末までには元職員が概ね容疑を認めていることや、現職市議の指示や関与があったことを警察の調べに対して答えている証言を複数得ている。
 県警は一連の官製談合の首謀者を元市議と元職員の2人と見ている。また2人が業者から「リベート」の金品を受け取っている贈収賄もあるとして調べを進めている。この元職員が操作の手が自身に伸びていることを知って依願退職(退職金支給は差し止め)した後も、逮捕された市議は公職の座に堂々と居座っていた。
 逮捕までの間、この市議には正規の報酬が血税から支払われてしまっている。概ね容疑が固まっていたと見られる昨年12月末、もう少し逮捕が早ければ…。遅れを挽回すべく県警には、徹底的に不正の全容を調べてもらいたい。すべての不正を洗い出さなければ公務員は「身内に甘い」と指摘される。
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