奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.2.3掲載  社説「時々刻々」

コロナウイルスの脅威県内にも 過不足ない情報の公開を

論説委員 染谷 和則

 日本列島を新型コロナウイルスの見えない脅威が襲っている。28日には60歳代、奈良県在住のバス運転手の日本人男性がウイルスに感染していたことが、厚労省の発表で明らかになった。国内での感染は初。厚労省によると、男性患者は運転手として中国武漢市からの観光客を1月に計2回、バスに乗せたといい、国内で人から人へ感染した可能性が極めて高い。 厚労省の発表を受けて県もすぐさま会見。男性患者が県外でバスを運行し、そのバス車内で感染した可能性が高く「県内での感染は考えにくい」とした。また、患者と接触した人のリストアップを終え「男性患者の家族や医療関係者で、ほかに症状が出ている人はいない」と説明した。 中国の発表では既に、1日当たり数百人から1000人が新たに新型コロナウイルスに感染している状況で、感染被害はますます拡大している。これら中国の発表している感染者数が信用に足る数字かどうかは、有識者から続々と指摘が出ている。 最初にコロナウイルスによる新型肺炎の症例が確認された武漢市の周先旺市長は、初動の情報公開が遅れたことを認めた上で「中央政府の許可がなければ情報を公表できなかった」との主旨を述べ、感染拡大を防ぐ初動に問題があったことを認めた。中国国営テレビが報じた。 当初、世界的な危険度を「中程度」としていた世界保健機関(WHO)は23日、国際的に懸念される公衆衛生上の「緊急事態宣言」を「時期尚早」として見送った。こちらも「その判断でいいのか」と指摘したくなるものだ。 中国本土では武漢市の封じ込めを行ったが、既に国内にウイルスが広がりを見せ始めているのは疑いようがなく、今後、どのようなスピードで蔓延するかは想像がつかない。すべての初動の遅さからウイルスは上陸し、県内にまできている。 訪日した中国人や、感染した患者、その家族など、プライバシーや差別がないよう人権を十二分に配慮する必要があるが、ネットでは県内在住男性が診療した場所を特定しようとする動きもある。 これは国や県の情報公開に対して、どこで感染したのか、どんなルートだったのか、それらが不足しているためだ。無用の詮索を市民が行わないよう、過不足ない情報の公開が求められる。


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