奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.1.6掲載  社説「時々刻々」

県経済、観光の飛躍 起点の年に 郷土愛が県外からの誘客へ

論説委員 染谷 和則

 令和2年、いよいよ東京五輪開催のオリンピックイヤーを迎えた。県が奈良市役所前で建設を進めているコンベンションセンターに加え、併設するJW・マリオットホテル奈良も着々と工事が進んでいる。奈良の経済や観光の飛躍に向けた起点の年にしたい。
 県が昨年まとめた「県民アンケート」の結果や、賃貸不動産大手の大東建託が行った「街のすみここちランキング2019」では、いずれも生駒市や香芝市、葛城市、王寺町など、県中部や県西部の自治体の満足度が高い結果が出た。県民アンケートでは住みやすさの満足度で地域間で30ポイントもの隔たりがあることも明らかになった。
 県議11期と、互いに県政史上最長を記録し、県内経済団体のトップを務める出口武男氏(奈良市・山辺郡選挙区)と川口正志氏が今号で対談した。共に県内のさらなる経済発展の鍵を「南部の可能性」と説き、五輪やその先に控える大阪万博から県内への誘客をするためには北部と南部の県民同士の往来を盛り上げていく必要があると結論付けた。
 県南北を走る京奈和自動車道の開通を受け、南北の往来は飛躍的に便利かつ時短になった。しかし県民同士の往来はまだまだ伸びしろがありそうだ。両氏は、南部への工場や企業の誘致を進めて雇用の場を作り、交流人口を増やしてひいては定住者を作り、商業施設など生活基盤の往来のための拠点整備が必要と説いた。
 最北端の奈良市と最南端の十津川村を結ぶ奈良交通のバスが観光動線を作る「十津川観光特急バス」の実証運行を行う。幾度の台風の被害を乗り越え、戻りつつある観光客が増加すればと、同村観光協会は期待を寄せている。
 世界に誇る歴史資産を有する奈良だが、県民の多くは「奈良府民」と呼ばれ、県外へ就業、就学する率が極めて高く、消費も県外が多い。これらのことから郷土愛を育むことが難しい土壌にある。県外の観光客を奈良県に呼び込むためには、宿泊施設や道路の整備も重要だが、県民がいかに郷土に対して愛情を持つかが大きな鍵。
 県民が県外で消費するのではなく、県内を周遊したくなるような動線の創造は、いつか県外からのさらなる誘客につなげる動線になるのではないか。
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