2026.2.9掲載 コラム「而今」
「民の口を防ぐは、水を防ぐよりも甚だし」。「国語」に見える召公の諫言。民の声を塞げば、堰を切った水のように破壊的な力となって噴き出す。古の警句が、今も重く響く▼衆院選の最中、ある候補者の「消費税12%」発言がSNSで瞬く間に拡散した。投稿は数時間で数万に達し、不安と憶測が増幅していく。県内の商店街でも「やはり増税か」の声。後に釈明があったが、疑念は容易には収まらない▼観光客は戻ったが、暮らしは楽にならない。物価高と介護費。商店主や子育て世代が口にするのは将来の不安だ。数字の向こうには、生活不安がある▼だが、不安が先に立ち、政策の中身は後回しになりがちだ。12%という数字だけが独り歩きし、怒りと疑念が共鳴して拡散する。かつて活字は時間をかけて届いた。今やひと押しで世界に放たれ、訂正は追いつかず、不信が残る▼召公はこう説く。「宣けば、則ち流る」と。立ち止まり、あらためて問うべきではないか。声の大きさではなく、その中身を。有権者一人ひとりが流れに流されず考える姿勢。それこそが、政治の水を治める力になる。(佑)
