2025.12.8掲載 コラム「而今」
近年、奈良へ宿泊する観光客のうち、45%は外国人になっている。インバウンドはたしかに県内の観光経済を豊かにしているが、その反面、住んでいる県民や日本人観光客に寄り添えてはいるか―▼中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけた影響が徐々に出てきており、県内の宿泊施設やホテルから「キャンセルが出た」などの声が聞かれている。関係者の悲痛な事情がある一方「本来の奈良の姿に安堵する」との意見も▼コロナから脱却し、物価高も相まって国内の旅行、宿泊、観光地の飲食は「外国人観光客向けの値段」。軒並み値上げの状態で、日本人になじむものではなくなった▼奈良市をはじめ京都市、鎌倉市は国の「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」(古都保存法)によって厳しい開発規制、歴史風土の保存が定められている▼その地に住む人、国民が同法に基づき古都保全に努めるも、受益者が外国人になっている現状はアンバランス。今こそ観光施策を根底から見つめ直さねば、他国の事情に右往左往する脆さは解消できない。(染)
