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2025.4.21掲載  コラム「而今」
 英国の家の多くは1900年ごろに建築されたもので、ゆうに100年を超えている。古い物を大事に使う文化がある。英国ファッションデザイナーのポール・スミス氏は「古い叔母の家に引っ越してきたとき、すべてを変えるのではなく、少しモダンにするのが礼儀」と表現している▼わが国でも築年数が経過した家屋に現代的な解釈や利便性、機能性を取り入れる文化が徐々に定着化してきている。不動産業者に言わせると、古いものに手を入れて使うという行為が若い人たちに「洒落ている」と考えられているらしい▼一方で、映画やテレビドラマ、書籍の作品では、現在では使えない描写がある。いわゆる差別用語だ。先月、県内市議会で「障害者」「障碍者」「障がい者」など呼称による議論があった。実に不毛な議論。時間の無駄▼もちろん差別用語を使うべきではないが〝言葉狩り〟と言えるほど過敏に、また過激に「古いもの」を排除しようとする傾向は、物事の本質から大きく逸脱する▼冒頭にある「礼儀」が欠けた変化は、歓迎すべきものではない。       (染)
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