2024.12.23掲載 コラム「而今」
長年通う飯屋は、90歳を超える女将の実母がうまい古漬けを作ってくれていた。しかし今年逝った。金曜だった。「母は商売人やねえ。うちは土日休みやから、お客さんに迷惑掛けるんは金曜の一日だけで済んだんよ」と女将▼かつて自民党に「金曜会」という派閥を超えた政策研究会があった。衆院議長、岸内閣や池田内閣で文部大臣、厚生大臣などを歴任した灘尾弘吉が主宰し、灘尾が政界を引退するまで20年以上も存続した▼会がそれほど長く続いたのは、政局の話をしなかったからだという。純粋に天下国家、政策を議論した。政治の目線は国民へと向いていた時代だ▼国では、自民、公明、国民3党の税制協議が、自公が幹事長合意を反故。奈良県では山下真知事が、理解を得難いK―POPのコンサートに2・7億円を掛けるという。いずれも目線はどこに向いているのやら。ため息が出る▼今年は良い一年を過ごせたのか―。良いことより悪いことの方が多い世の中。「酔いこと」でごまかし、今年も一つ年を重ねることができたと感謝するほかない。(染)