2024.11.18掲載 コラム「而今」
緑色が強い旧千円札の束の中、多少赤みのある新券が紛れていると「お、五千円」と勘違いしてしまう。割り勘で酒を飲み、五千円を出そうとしたところ、新券の千円札を見間違えて指し出そうとしたことがある▼前の前の五千円札はたしか新渡戸稲造。著書「武士道」は、宗教教育がない当時の日本の学校に「どうやってあなた方は道徳教育を子孫に身に付けさせるのか」と外国人学者に驚かれたことがきっかけで筆を走らせたもの▼先の衆院選で躍進した国民民主党だが、首班指名の日、週刊誌が党首の女性スキャンダルを報じた。不倫や異性関係などで鬼の首を取ったかのような報道には嫌気が差す▼この党首をかばう気はないが、まだ仕事に着手もしていない選挙後、すぐさま下世話な話でたたく必要があるのか。一点の曇りもない聖人君主のような人がいるはずはないが、他者には強い人間がいかに多いことか▼もうこの国にサムライはいない。不文律もない。他者へ厳しい倫理観を求め、袋叩きにする。こんな環境を是とするのか、考える時ではないか。 (染)