2024.8.19掲載 コラム「而今」
四字熟語に「駟不及舌（しもしたにおよばず）」という言葉がある。一度口から出た言葉は、四頭立ての馬車「駟(し)」で追いかけても追いつけない。つまり「口は災いのもと」と同じ意▼昨今では、インターネットサイトやＳＮＳなど「文字」で言葉が発信される。印刷して発行する紙媒体とは違い、修正すればすぐになかったものにできるとも思われがちだが、そうはいかない▼先日、Ｘ上で、ユーチューバーでお笑いタレントの女性が投稿した不適切なコメントが、世間を騒がせた。すぐに削除するも保存され、さらに過去の不適切発言も〝発掘〟。活動休止することになった▼小学校の先生や教育委員会に聞いた話では、子どもらの間でＬＩＮＥなど文字のやりとりが増え、話すよりも意思疎通が難しく、喧嘩（けんか）の原因になることもあるという▼感情の見えない文字は、時に言葉よりも鋭くなる。ネット上に公開したものは「デジタルタトゥ」と呼ばれる。半永久的に消せないことを表現した造語。今の時代、文字は口よりも災いを呼ぶものになっている。（梅）