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2022.8.1掲載  コラム「而今」
 桜井市下の聖林寺には、明治時代の神仏分離令により、大神神社神宮寺の一つ、大御輪寺(だいごりんじ)の本尊が移された歴史を持つ▼それこそが、奈良時代に作られた天平彫刻の名品として名高い国宝・十一面観音菩薩立像。安置してきた観音堂が耐震基準に合わなくなり、昨年5月から工事を行ってきた。その観音堂がリニューアルされた▼改修前の2・5倍の広さで、内部のドーム型収蔵庫に観音像を安置し、空調で温度と湿度を管理する。透明度の高いガラスで、拝観者は360度から拝める配置だ▼観音像の肉付きの良さ、写実的な衣の曲線の表現に魅せられた多くの文化人がいる。米国の東洋美術研究家アーネスト・フェノロサや写真家の土門拳らだ▼今回、観音像の後背に施された文様をデザインに入れた寄進の吊り灯ろう48基が、本堂から新収蔵庫の観音堂に続く廊下へ掲げられ、灯りがともされる▼一般拝観はきょう1日から。ロシアによるウクライナ侵攻がいつまで続くのか。コロナも落ち着かない社会情勢の中、世界平和と疫病退散の願いを込めて。      (寺)
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