奈良県内の政治経済情報を深掘

2022.7.18掲載  コラム「而今」
 長男が生まれた日は、大きな喜びを感じた一方、痛みや苦しみを与えてしまう怖さも覚えた。将来、病や人間関係に悩むかもしれない、敗北感に打ちひしがれるかもしれない。それでも生きてほしいと切に願う▼憲政史上最も長く首相を務めた安倍晋三氏が、奈良市在住の容疑者に銃撃され死亡した。左派新聞をはじめ、メディアは容疑者の素性を「元自衛官」と繰り返し報じた▼容疑者の供述では、母親が旧・統一協会の信者で多額の献金から破産した恨みがあったことや、安倍元総理が教会と関係があると一方的に思い込んだことが動機。「自衛官」は犯行に直接関係がない▼容疑者が犯行時に歩んだ自宅から新大宮駅までは516歩だった。この間、彼は何を思って歩を進めたのか。思い留まる何かに出会えれば良かったが、彼は犯行へのアクセルを踏んだ▼安倍元総理の批判を繰り返し、容疑者の生い立ちや素性のレッテル貼りに躍起するメディアと大衆。この大きな痛みから、それぞれがどこに着地点を見出すか考え抜かねばならない。われわれは明日も生きなければならないのだから。   (染)
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