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2022.3.14掲載  コラム「而今」
 子どもの頃、奥宇陀の山間地で育ったこともあり、スギ花粉にこれまで悩まされた記憶がない。と、高を括(くく)っていた▼それがそうでもないことが、この3月に入って感じている。冬の寒さが峠を越し、昼間は肌身に暖かさを感じはじめ、スギ花粉の飛散量が極端に増えているようで、目にかゆみが忍び寄ってきた▼「うちのかみさん」のように、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み―といった重い症状ではないものの、とにかく目がかゆい。未だかつて経験したことのないことである▼スギは樹齢30年以上になると、大量の花粉を放出する。それが体内に入ると抗体が働き、くしゃみなどの諸症状を引き起こす原因になっている▼昭和30(1955)年代以降、県内各地でも盛んに植えられた木が、林業不振で手入れが行き届かないまま、樹齢を重ねて花粉を飛散させている▼花粉放出は、樹木からすれば子孫を残すためのもの。もともと生物多様性を軽視し「人工林を増やせ」と人間が蒔(ま)いた種。林業の側面から、もっと考える余地があるのでは。   (寺)
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