2019.12.9掲載 コラム「而今」
日本で開催されたラグビーW杯では、史上初のベスト8入りを果たしたジャパン。この偉業の達成まで、苦難の連続だった▼プロ野球の人気に隠れて国民の目に届きにくかったラグビー。その中で技術、力、人気を押し上げてきた3人のスター選手を抜きにして語ることはできない▼宿沢広朗(埼玉・熊谷高―早大―旧住友銀行)、松尾雄治(東京・目黒高―明大―旧新日鉄釜石)、平尾誠二(京都・伏見工業高―同大―神戸製鋼)。選手、指導者として力量が光った。宿沢と平尾はともに50歳代の若さでこの世を去った▼その遺志が綿々と引き継がれてきてのW杯ベスト8。花園切符を手にした御所実業高ラグビー部。草創期の試合中に首の骨を折り死亡した選手の家族の意志が後押しする。廃部寸前の状況を救ったのは「息子のために続けてほしい」の一言だった▼就任したばかりの竹田寛行監督には試練が待っていたが、古豪・天理高の胸を借り全国屈指の強豪校に。あとは頂点をとるだけ。監督30年。教諭として定年まであと2年。監督の「優勝」への思いは「ワンチーム」の選手の闘魂に宿る。 (寺)