2019.12.2掲載 コラム「而今」
左党と言っても政治の話ではない。酒好きの話▼前号で、奈良県民は日本酒好みとの分析があったが、うま酒の枕詞を持つ三輪や、南都諸白で有名な清酒発祥の正暦寺などを有する本県からすると、この結果は誇りとすべきであろう▼牧水は、白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけりと詠み、酒はほどほどにと言われるが、わかりつつも左党はそうはいかない。そして次の日、やらかした失態に冷や汗をかき、うろたえること再三である▼筆者もその類であるが、歴史上もっと凄いのがいる。小野道風、藤原行成とともに「三跡」と称される平安貴族の藤原佐理(すけまさ)である▼この人、酒席での失敗が相次ぎ、ついに大宰府に左遷されることになった。ところが、大宰府への赴任に際し、摂政・藤原道隆に挨拶するのを忘れてしまう。道中でそのことに気付き、従兄弟にそのとり なしを頼んだ手紙が国宝「離洛帖」である▼佐理が酒を飲んで失敗しなかったら、この劇跡は生まれなかった。左党大いに自信を持つべし。 (耕)