奈良県内の政治経済情報を深掘

2022.8.8掲載  社説「時々刻々」

視界良し全国知事会と経団連 協働で推進し活力ある地方創出を

論説委員 寺前伊平

 7月28、29両日、奈良市の県コンベンションセンターで全国知事会議が開催された。「危機突破! 挑戦が未来を創る」がテーマだった。言うまでもなく、新型コロナウイルス感染症でのオミクロン株に新たな変異株への置き換わりの影響もあり、過去最多の新規感染者数を記録。医療現場がさらにひっ迫する中、3年ぶりの対面開催にこぎつけた。
 会議初日には、日本経済団体連合会(経団連)の永井浩二副会長(野村ホールディングス会長)ら役員が紹介された。全国知事会との協働推進宣言の発表と初の意見交換会に臨むためだった。今年2月、十倉雅和・経団連会長(住友商事会長)と全国知事会とのトップ会合による話し合いの末、この日の場が実現した。
 経団連の大きな取り組みとして、テレワークや複業、兼業などを活用することで、人流の拡大が地域産業の活性化と雇用を創出させること。また安心して暮らすことができるまちづくりの展開。意見交換会では、各知事が協働推進宣言同様に、人、仕事、まちをテーマに意見を述べた。
 6年前「ワーケーション」という言葉を日本で初めて使った仁坂吉伸・和歌山県知事。「三方よしの中には企業もよし、地域もよし、取引先もよし、ということでなければ日本経済が動かない。部品供給を含めて地方の企業の利益を増やしていただければ、企業の従業員の給料アップになり、地方経済が復活。それがまた日本経済を復活させることになる」と説得力に富む。
 また、三日月大造・滋賀県知事は近江商人の考えを示した。一つ目は、デジタル地域コミュニティー通貨「ビワコ」の取り組み。二つ目は、都市部大企業のプロフェッショナル人材を副業や兼業を兼ねて、地元・滋賀の中小企業などで活躍してもらうマッチング支援。三つ目は、出産や子育てに社会全体が理解を広げていくということ。その三方よしが重要だと話す。協働推進宣言の基本的な方向性は「仕事をつくること」「人をつなぎとめ、新たな流れをつくること」「地域の暮らしやすさを磨くこと」だ。
 奈良県もそうであるように、実際の子どもと理想の子どもの数にギャップがある。その理由は、子育てや教育にお金がかかりすぎることにある。仕事と子育ての両立ができる職場環境がなければ、活力ある地方の創出にはつながってこない。


menu
information