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2022.7.11掲載  社説「時々刻々」

国難の中の参院選 場当たりからの脱却を

論説委員 染谷和則

 「良識の府」「再考の府」とも呼ばれる参議院の改選が終わった。さまざまな物価の高騰が止まらない中、さらなる痛手になる新型コロナウイルスの感染拡大。国民生活は日に日に窮地に立たされているような空気感だ。
 このうだるような暑さの中、一部地域では連日、電力のひっ迫が危惧(きぐ)されている。円安、不安定な世界情勢の中、電力、原油、天然ガスを供給できない背景もあり、価格が上昇している。エネルギー政策について場当たりな対応をしてきた政府、政治の姿も見え隠れする。
 先日、携帯電話大手のKDDIで、大規模な通信障害が発生。auをはじめ最大3900万回線がダウンした。電力不足、通信障害、当たり前に誰もが享受できるよう整備してきた社会インフラが脅かされている。この国はいつの間にか、既に先進国ではない。
 回線ダウンでは、右往左往する人々で溢れた。かつて大事な電話番号は覚えていた。手書きの手帳も10円玉も常に持っていた。公衆電話の場所も覚えていたが、これも既に過去の遺物。全て手のひらに収まるスマートフォンに依存している。
 使い手のわれわれも既に思考が停止し、日々の生活は依存し「場当たり感」は否めない。選挙を玩具のように扱う者、それを客席から喜劇のように傍観し「政治が悪い」「政治不信」で片付ける有権者。この構図のままでは何も変わらない。
 さまざまな商品、サービスの価格上昇が止まらない物価高も、国の対策交付金が地方自治体に流れ、県内では水道料金の減免、給食費の高騰抑制、地域振興券の配布など、さまざまな施策が検討、事業化されてきている。
 しかしこれも悲しいかな、一時の対策に過ぎない。超高齢化、超少子化の時代に直面している中、生産人口が極端に減る問題を直視し、一刻も早い対策を打たなければ、今の経済構造が破綻することは明らかだ。ここへの積極投資なしに状況の改善と発展はありえない。長期的な国家的ビジョンと地域ビジョンが急務だ。
 今回の改選で当選した方々の仕事に期待したい。参議院の存在意義と存在感を発揮してもらうことが、この国難ともいえる時代を切り拓くはずだ。場当たりではない、良識と再考が機能しなければ、未来はない。それはわれわれも同様。


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