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2022.6.27掲載  社説「時々刻々」

参院選公示で訴えるもの 生活者や小自治体に強く響け

論説委員 寺前伊平

 第26回参院選が22日に公示され、投開票日の7月10日に向け、県内では6候補者による舌戦が繰り広げられているところだ。
 真っ先に考えることは、ロシア軍によるウクライナへの侵略戦争。停戦の先が見えず、長期戦の様相が濃くなってきている中、小麦の大生産国でもあるウクライナからの輸出が途絶えてしまった。食料品の価格が急騰していることは筆舌に尽くしがたい。
 それに追い打ちをかけたのが、原油価格の高騰。生産部材や電気代、ガス代なども次々値上がりし、庶民の日常生活にも支障をきたしかねない状況に追い込まれている。原因は独裁者・プーチンであるにせよ、持続可能な開発目標を定めた国連のSDGsにも通底する世界秩序、民主主義、人権といった価値観さえも脅かされている。かつてない、こうした状況下の中での参院選であることを選ばれる側、選ぶ側とも真剣に受け止めるべきだ。
 その上で、6候補者は党公約を基本に据えながらも、奈良県独自の深刻な状況に対応する具体的な訴えが必要だろう。特に原油価格・物価高騰が県内中小企業の事業環境に厳しさを増していることへの配慮は欠かせない。まず、中小企業事業者に具体的に分かりやすく伝える必要がある。
 参院選と同時進行で県議会6月定例会が開かれている。燃料価格の高騰対策事業として、営業利益が減少した中小企業者のほか、公共交通・運送業者、畜産農家経営者、施設園芸生産者、新規就農者、一般公衆浴場経営者らに、補正予算を組み補助しようとしている。
 また、児童扶養手当を受給している世帯などに対して、生活支援特別給付金として児童1人あたり5万円の給付を6月中に終える。候補者は、県内各地で遊説する中で子育て世代の有権者に、国としてさらに手厚い保護を公約としてほしい。
 さらに言えば、県中南部を中心とする人口減少や、それに伴う地方の衰退、教育の格差といった深刻な状況をどう改善していくかも争点にしてもらいたい。地方に国政が身近になるよう、さまざまな施策に反映していくべきだ
 例えば、高野山に近い野迫川村は、人口350人弱。村自体を守り、どう未来につなげていくかが課題だ。6候補者には選挙期間中、一度村に入り実態を目で確かめ、住民から直接聞き取りしてほしいものだ。


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