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2022.5.30掲載  社説「時々刻々」

マイナ保険証へ統合検討 省庁横断で将来ビジョンを

論説委員 染谷和則

 厚労省は、将来的に現在の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと保険証を一体にした「マイナ保険証」に統合することで検討に入った。同省によると、マイナ保険証に対応したカードリーダーなどの設備を導入している医療機関は全体の20%未満。来年4月から設置義務化を医療機関に課す考えだ。
 利用できる医療機関を増やすため当初は、カードを提示した患者が自己負担率3割の場合、初診で21円、再診で12円、調剤で9円の診療報酬の負担を検討していたが、批判を受けたためこれも見直し。たった21円だが、病院に行くことが日常的に多く、選挙では投票率が高い高齢者の声に配慮した側面もある。
 マイナンバーカードの交付率は約45%。ここから交付率を高めていくことは難しい。何せ、今までの肯定している層やポイント付与が欲しい層とは打って変わり、興味がない層や批判層が相手になる。そういったこともあってか主管する総務省のキャンペーンのキャッチコピーは「そろそろ、あなたもマイナンバーカード」。
 カードをめぐっては総務省のポイント付与や、デジタル庁、財務省の考えなど、省庁の思惑が交錯する。マイナ保険証へのいわば〝強制切り替え〟は、今後の交付率向上もにらんだものだ。誰もが保険証は必要である以上、切り替えは必須になっていく。  ただ現在でもこのマイナンバーカードで何ができるか、交通整理が必要な部分があるのではないか。保険証にするという大鉈を振るう以外にも、省庁が横断的に創意工夫を凝らしてもらいたい。何せ相当の予算を突っ込み、国民全員に持たせようとしている一大プロジェクトだ。この一枚でどんなことができる未来になるのか、それを示す必要がある。
 カードの将来的な利用の青写真は、各省庁に横串を刺しリーダーシップを取るべきはデジタル庁ではないか。厚労省に主導権が一気に流れそうな気配すらある。さらにはもっとリーダーシップを発揮すべきは政治家。それが仕事だ。カードの事務仕事を特定業者に丸投げ、再度丸投げなんてお粗末な話はもう聞き飽きた。
 参院選の火ぶたが切られるまでおよそ1カ月。奈良県選挙区では6人の立候補予定者が出馬する見通しだが、各党のこのカードを含めた政策、展望を見極めねばならない。

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