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2022.5.23掲載  社説「時々刻々」

乱立する次期参院選 維新候補予定者が〝台風の目〟か

論説委員 寺前伊平

 任期満了(7月25日)に伴う次期参院選が、にわかに騒々しくなってきた。というのも、1人区の奈良県選挙区に18日現在、自民党現職のほか、いずれも新人で立憲民主党、共産党、NHK党、日本維新の会、参政党から計6人が順に立候補を表明し、すでに県内での売り込み作戦にしのぎを削っているからだ。
 6年前の平成28(2016)年では、民主党と維新の党が合流して結成された民進党現職に対し、自民党、日本維新の会(維新)、幸福実現党から新人が出馬。公明党の推薦を受けた自民党候補(現職)が45・5%の得票率を獲得し、初当選した経緯がある。
 ここで侮(あなど)れないのが、2位民進と3位維新の得票率。それぞれ33・7%、18・7%だった。合計すると、半数以上の52・4%に達したことだ。2位候補は、短期決戦だった昨秋の衆院選奈良県1区に、今度は維新から立候補し、比例近畿ブロックで復活当選を果たしている。
 このことを考え合わせ、維新が次期参院選でも〝台風の目〟となることは間違いない。維新候補予定者は県議2期目途中で昨夏の奈良市長選へ転身、落選はしたものの4万票を超える得票(得票率27・4%)を獲得。その後は、参院選を見据えて衆院議員の秘書を勤めてきた。
 ただ、自民現職には強みがある。昨秋の衆院選で県1区の比例復活を含め、1~3区の候補者全員が当選。支部が強固な組織を構築し、県内市町村長との連携がかみ合う基盤が整っている。
 それに加えて、NHKが実施した直近の世論調査(5月6日~8日)によれば、岸田内閣を「支持する」と答えた人は、先月より2?上昇して55%になった。その中で大きなウエイトとなっているのが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対する、これまでの日本政府の対応。「大いに評価する」「ある程度評価する」を合わせ、回答した68%の人が好意的に見ていることが大きい。
 全国的に見ても、野党はこれまでの経緯から立憲民主と共産が主導する候補者調整に国民民主が背を向けて、歯車がかみ合っていないところが弱みともとれる。その間に入る維新は勢いがあり、積極的に独自候補を擁立する構図には変わりない。参院選までおよそ2カ月。乱立しているとはいえ、中でも維新の動きからは目が離せない。

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