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2022.4.251掲載  社説「時々刻々」

統一地方選知事選まで1年 保守候補の鍵握る2氏

論説委員 染谷和則

 今夏の参院選に向けて立候補予定者の動きが活発化してきている。これに呼応するよう、1年後の春の統一地方選の知事選、県議選の動きも慌ただしくなってきた。県議選では現職の勇退が表明されている選挙区もいくつかあり、新人候補の準備も進んでいる。
 統一地方選の最大の関心は知事選だ。現職の荒井正吾知事は5選に意欲的。今月は上京して自民党の前幹事長・二階俊博衆院議員と面談しており、5選への意欲を話したと見られる。またこの上京時には、荒井知事の「政界の父」元衆院議員で自民党の元幹事長の古賀誠氏とも接触したと伝わる。
 ただ、荒井知事周辺では、後援会組織の高齢化に加えて、自身の高齢、多選などネガティブな要素もあり、二階、古賀の両氏ともに現段階では知事選への出馬へ「ゴー」のサインを出さなかったようだ。2人が保守候補の擁立の鍵を握る。
 奈良市出身で、ネクスコ東日本の代表取締役兼専務執行役員を辞し、今年1月1日から内閣総理大臣補佐官に就任した元国土交通事務次官の森昌文氏も古賀氏と近く、ここ数年は荒井知事の後継と見られてきた。
 過去に内閣総理大臣補佐官は1年で辞任した例もあり、今年12月末まで同職を務め、4月の知事選へ向かうというシミュレーションも推察できる。現段階では、古賀氏の意向次第で、荒井、森の両氏いずれかが知事選に出るのかが決まる可能性もある。
 新型コロナウイルス感染症に対する荒井知事の手腕には評価する声がある一方、根強い批判もある。多選や年齢の問題だけでなく、荒井氏への批判は、これらコロナ対応への風当りが強い。県内市長、町長からも知事選への出馬をうかがう動きがいくつかある。
 1年後の争点の一つに新型コロナは依然重要な要素だろう。これに加えて、今回浮上した来年4月1日から運賃を値上げ改定しようとする近鉄の問題。運輸省(現国交省)出身の荒井知事は、いち早く同省に対して公聴会の開催を求め、県民の負担増は容認できない姿勢を示した。
 荒井知事は、来春の知事選に向け、一つアドバンテージを得た格好か。自身が5選に向けて出るか、後継に〝院政〟を敷くか。荒井知事の最大の支援政党の自民党は「勝ち馬」に乗るべく、見極めている状態。鍵を握る二階、古賀、両氏の動向に注目が集まる。

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