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2022.3.21掲載  社説「時々刻々」

昨年度のふるさと納税市場過去最多、返礼品登録には審査を

論説委員 染谷和則

 ふるさと納税の市場は昨年度、過去最高の計6725億円にまで成長した。納税受け入れ件数は全国で3489万件にもなる。平成20(2008)年度にはじまった制度だが、市場規模は80倍以上に膨れ上がっている。
 総務省の統計によると、昨年度の受け入れ額が最も多い都道府県(都道府県と市区町村の合算)は、北海道の975億800万円。全国の14・5%ものシェアがある。最も少ないのが山口県の22億9700万円で同0・34%。わが奈良県はというと下から2番目。23億7300万円で同0・35%しかない…。
 返礼品を目当てにした「カタログギフト」のような側面があり、もはやふるさとを思う気持ちの寄付ではない制度になっているため、海産物や農産物をはじめとしたブランド特産品がある北海道は強い。 しかしながら、同省によると、寄付してくれた方々に対して、寄付金を充当する事業の進捗状況の報告や、寄付者と継続的なつながりを持つように年賀や暑中見舞いを出すなど、各自治体が「営業努力」に精進しているといい、これらの取り組みを行っている自治体は全体の40%ほどだが、年々増加している。
 この、ふるさと納税の巨額マネーを獲得していくため、奈良県、県内市町村はさらなる努力が必要。そのため首長がトップセールスで地縁のある企業のふるさと納税をお願いしたり、一番多い取り組みでは、魅力ある地元の産品を返礼品に加えるなどしている。
 大和高田市の返礼品に登録してあった地元のウナギ店の商品だが、この店が中国産ウナギを国産と偽って販売していた。近畿農政局は、同店が少なくとも令和2年4月1日から同年11月30日までは偽装していたと結論付けている。
 この店の返礼品を求めて大和高田市には、偽装期間中に20人の寄付者(計55万3000円)があった。偽装を受けて市は希望者に返金対応することを決めた。しかしながら、同店が市のふるさと納税の返礼品に登録した経緯などについて市は「申請書類が保管されているのみで分からない」としている。
 産地偽装をはじめ、今後は取り扱う会社や商品の厳重なチェックも必要か。ふるさと納税の人気の高まり、自治体間の争奪戦が激化する中、ふるさとの名声やブランドを傷付けぬよう、管理努力も求められる。

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