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2022.2.21掲載  社説「時々刻々」

県予算案から見えてくるもの 安全安心の地域づくり強化必至<付br>

論説委員 寺前伊平

 新型コロナウイルス感染症が収まる気配が見られない中、県は令和4年度の当初予算案を発表した。一般会計の予算規模は5503億1000万円で、前年当初と比較して額で136億4800万円の増加になった。
 言うに及ばず、新型コロナに対応するための国庫支出金を積極的に活用した予算編成。同時に示された2月補正予算案でも一般会計は544億円にも上り、ひっ迫した現状が見て取れる。
 これとは別に、新年度当初予算案で目を引くのは「安全安心な地域づくり」への予算組み。土砂対策の推進に65億円を盛り込んでいることである。県土砂災害対策施設整備計画に基づき、施設整備の安全確保に取り組んできているものの、気候変動などによりまだまだ十分とは言い切れない。
 県は新たに、土石流などによる被害から人家、交通ネットを守るため奈良市の鹿野園沢などで砂防設備を設置する。また、天川村の坪内地区などに地すべり防止施設をつくり、地すべりから人家を守る。さらには、東吉野村大又地区などに急傾斜地崩壊防止施設を整備する。
 このほか、現状の避難所の中でも非常に危険な県内21の「レッド区域」の避難所を別の安全な場所への移転促進を図る。併せて、代替性のない避難所がある153箇所については、近接の代替施設の整備を早める。
 こうした施策は、昨年7月に起きた熱海市の違法盛り土が原因の土石流災害を受け、県予算でも反映された形だとも受け止められる。熱海市の災害では、27人の死者・行方不明者を出し、民間業者による開発での盛り土問題として全国的に波及した。県内でも、メガソーラー建設計画のある平群町や山添村で住民の反対運動が起こっている。
 そんな中、政府が盛り土の規制強化のために検討してきた「宅地造成等規制法」の改正案が、3月上旬の閣議で決定され、通常国会に提出される見通しになった。名称を「宅地造成及び特定盛土等規制法」に変更される予定だ。可決されれば、国土交通、農林水産両省が所管となり、法人対象の罰則規定が新たに設けられるという。
 県の当初予算案にも、砂防指定地や許可エリアでの違反行為の早期発見やデジタル技術を活用した土地改変行為の監視を強化していくため、予算案に4450万円が盛り込まれている。「安全安心な地域づくり」へ、予算の〝見える化〟がより一層重要になる。

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