奈良県内の政治経済情報を深掘

2022.1.31掲載  社説「時々刻々」

県内倒産件数30年で最少 〝延命装置〟いつまで続くか

論説委員 染谷和則

 奈良県内で昨年1年間に負債総額1000万円以上で倒産した件数は、74件で前年比13・95%の減、負債総額は47億200万円で、同比61・01%の減だった。倒産件数はバブル景気崩壊後の平成3(1991)年以来で最少だった。東京商工リサーチ奈良支店がまとめた。
 負債額10億円以上の大型倒産は1件のみ。倒産件数の産業別では「サービス業」が最も多く30件あった。新型コロナウイルス関連は16件あった。この新型コロナ関連は、今後増加するのではないかという懸念がある。
 2年余におよぶ新型コロナウイルスの脅威。経済活動の制限を受け続ける中、飲食をはじめ厳しい状況が続く。感染力が高いとされるオミクロン株の感染が拡大し、26日には県内で過去最多の感染者数になる776人が確認された。日々増える感染者数に呼応するよう、外出している人の数も減少している。
 国(経済産業省)はきょう31日から、売り上げが減少した中小企業や個人事業主に支給する「事業復活支援金」の申請受け付けを開始する。
 昨年11月から今年3月のいずれかの月で、過去3年間の月の売り上げが30%以上減少したことが条件。減少率と企業の年間売上高によって法人の場合は60万円から最大250万円が支給される。個人事業主の場合は30万円から最大150万円が支給される。
 新型コロナの打撃を受けた経済界に対して、これまで国、地方自治体は、持続化給付金や雇用調整助成金、セーフティーネットなど、手厚い支援策を打ち出してきた。
 これが企業の倒産に歯止めをかけてきた側面もある。これらの施策が言わば「延命装置」となってきた。制限を受ける経済活動の中、この装置が取り外されたとき、倒産は抑制できない可能性が高い。
 次々と現れる新型コロナの変異株に対して、このままの対応では、経済界が持たない。また財政枯渇も懸念される。致死率の低さからオミクロン株の動向を見て、感染症法に基づく危険度の分類を結核やSARSと同様の「2類相当」から、季節性インフルエンザと同等の「5類」へ引き下げを求める声が経済界、自治体からも上がる。聞こえの良い共存など幻想。優先順位をはっきりすべき時が来ていると言える。

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