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2022.1.17掲載  社説「時々刻々」

18歳で成人へ 無関心からの脱却

論説委員 染谷和則

 明治9(1876)年の太政官布告以来、わが国の成人の定義は20歳だったが、民法改正により今年4月1日から18歳で「大人」になる。世界を見ると先進諸外国は、18歳、19歳と、成人の定義を引き下げてきた経緯がある。それに倣った側面もあるが、政治的思惑が見え隠れする。大人になるということは物事の本質を見抜くということ。これを身に付けねばならない。
 来年度の国家予算は過去最大の107兆6964億円。新型コロナウイルスの感染拡大に備えた5兆円の予備費などを盛り込んでいるものの、10年連続で過去最大を更新している。今年度を比較して増加した分の9割は、年金、医療や介護などに使われる社会保障費だ。
 歳出(支出)が増えると歳入(収入)を増やすほかない。国はコロナからの脱却で税収増を見込む。コロナ禍の中での〝バラまき〟の後は、それを回収するしかない。機を図って段階的に増税に舵を切る可能性も否定はできない。
 超高齢化社会を迎え、わが国の高齢化率は28・9%、奈良県に至っては31・7%に上っている。3人に1人が65歳以上という時代。さらに少子化が要因し、社会保障費は膨らむばかり。将来を担う若者への負担増になることは容易に想像できる状況だ。
 成人の定義が引き下げられるのに先立ち参政権が18歳になって久しい。しかしながら、この世代はもちろんのこと、20歳代、30歳代の若者は選挙には行かない。また政治にも無関心。税金が上がろうが、自分が将来に受給できる年金額が下がろうが、受給年齢が引き上げられようが無関心―。関心のない世代に対して、政治が何かしてくれることは絶対にない。
 若い世代の方々の将来はどう考えても明るい未来とは言い難い。労働人口が少なく、膨らむ社会保障費で支える高齢者が増え続ける。投票でモノを言わねば、代弁してくれる政治家を選ばねば、若い世代が享受できる施策は実現されることはない。
 大人になる方々にはぜひ、政治に関心を持ってもらいたい。切り捨てられる世代にならないように。今の人口の構図を見て、政治家たちが投票に行かない世代をどう見ているか、本質を見抜かねば、大人になったとは言えないかもしれない。年齢はあくまで物差しの一つに過ぎない。

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