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2021.12.20掲載  社説「時々刻々」

千葉県八街市の死亡事故受け 抜本的な通学路の安全対策急げ

論説委員 寺前伊平

 今年6月、千葉県八街(やちまた)市で発生した痛ましい事故を受けて、全国的に安全点検が大きな課題となっている。今の通学路で果たしていいのか、横断歩道周辺の歩行環境に問題がないのか―など、さまざまな角度から安全対策が講じられようとしている。
 八街市の事故は、路上を走ってきたトラックが電柱に衝突し、下校中の市立朝陽小学校児童5人が事故に巻き込まれ、うち2人が死亡、残り3人も重傷を負った。当時60歳のトラック運転手は飲酒運転だった。
 直近では今月9日に、静岡県菊川市で軽自動車が集団登校中の小学生数人に衝突して逃走。児童5人が軽傷を負うひき逃げ事件。同日、愛知県東浦町で保育園児38人が2列で散歩中、その先頭に70代男性運転の乗用車が接触、園児ら9人が軽傷を負う事故が相次いだ。
 荒井正吾知事は10月、委員に県下市町村長を集めて「通学路等安全対策推進会議」を立ち上げ、第1回の会合を開いた。各市町村長からは、点検により抽出した危険箇所や対策案について直接報告があったという。
 その報告内容は▼車両速度が速い▼車両と接触の可能性について見通しが悪い▼横断歩道周辺の歩行環境が悪い―など、通学路の変更を含めて速度抑制、歩行空間対策の改善を望む声が示された。現在、県、県教育委員会、県警本部で対策案を協議している。
 これらについては、県議会定例会本会議の7日、田尻匠氏(新政なら)が代表質問。荒井知事は「国の補正予算に通学路の安全対策費は計上されている。国との財源確保に努めつつ、市町村と連携して進めていきたい。来年1月に2回目の会合を持ち、市町村から最終の対策案の報告を受け、速やかに実施可能な改善策を提案したい」と答弁した。
 具体的には、即効性の高い防護柵の設置、児童が歩くスペースの緑色カラー舗装・側溝ふたの設置による歩行空間の改善が考えられる。抜本的な対策としては、通学路歩道の新設や拡幅も重要なポイント。ただ改善策ができたとしてもこれまで通り、地元の理解と協力は欠かせない。登下校時の見守りボランティア活動は子どもたちの命の絆だ。
 いずれにしても、車両を運転する側の問題が最も問われる。数々の法違反行為はもとより、高齢者が加害者になる大事故をどう抑止していくのか、これにも喫緊の対策がいる。

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