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2021.10.4掲載  社説「時々刻々」

談合の五條市議に実刑判決 私腹を肥やすためのバッジ

論説委員 染谷和則

 五條市が建設した総合体育館(シダーアリーナ)へのスポーツ用品などを納入する入札をめぐる談合事件は、首謀者と見られる現職市議の牧野雅一被告(58)に対する判決が言い渡され、奈良地裁は懲役2年の実刑判決を言い渡した。牧野被告は控訴する方針。地裁は「反省の態度なく、説明責任も果たしていない」と、牧野被告を断罪した。
 事件は、体育館に納入するための柔道畳やバスケットゴールなどの入札で談合が繰り返され、牧野被告の主導の下、元市職員、県内業者らが関与した。用品メーカーや取扱業者の間にさらに別業者を挟んだり、自らに近い業者を入札に参加させ、落札価格を指示するなどして「リーベート」を得ていた。
 現職市議の逮捕という前代未聞の事態にも、五條市議会はこの事件の解明に積極性は見せず、一部議員はむしろ、苦しい理由付けを繰り返して牧野被告の擁護を繰り返し、調査権のある百条委の設置を2度見送り。世論の高まりを受け、ようやく設置した。事件関係者の証人喚問を経て、市の損害額を弾き出した。
 この百条委では牧野被告が逮捕された案件以外でも、また市議当選以前から市の入札に業者を使ってはたらきかけ、不当な利益を得ていた疑いが強まった。市の決算審査や予算編成時、牧野被告は厳しい財政運営の中「無駄使いや無駄な事業をするな」と議会で強く主張してきた。しかしその裏では、不正に手を染め、官製談合で私腹を肥やしてきた牧野被告の人物像が浮き彫りになった。
 議員は票さえ獲得できれば学歴も経歴も関係はない。人気投票の側面も大いにある。有権者は1週間ほどの選挙期間中、候補者の過去も未来への期待値も含めて判断しなければならない。政治不信が続く中、さらに政治を失望させた牧野被告の罪は重い。またこの人物を見極められなかった有権者にも反省点はあるのではないか。
 百条委の調査では、牧野被告らが関与した官製談合で市が受けた損害額は3400万円以上と結論付けた。調査ができていない期間や部署の範囲を含めると、さらに損害額は増加する可能性がある。  
 何のために議員になったのか―。もはや私腹を肥やすためと推察するほかない。そんな議員にも任期満了までは公金から報酬が支出される。
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