奈良県内の政治経済情報を深掘

2021.7.5掲載  社説「時々刻々」

県内3信金が高純利益 地域社会優先の目線が結果に

論説委員 寺前伊平

 「やましん」「ちゅうしん」「ならしん」といえば、奈良を代表する3信金の略称。それだけ、地域金融機関として普段から親しまれていることの証である。
 順に、桜井市に本店のある大和信用金庫、田原本が本店の奈良中央信用金庫、大和郡山市に本店を置く奈良信用金庫。この3信金がそろって、令和3年3月期(同2年2月~3年3月末)の決算で大きな純利益を生み出した。
 新型コロナウイルス感染症拡大のまさに真っ最中に、特に地域の中小企業や個人事業主に寄り添いながら、疲弊した地域経済を支えるために支援の手を差し伸べてきた。その評価が、高純利益として表れたように思える。
 信用金庫は地域の人が利用者・会員となって互いに地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした協同組織の金融機関。そのために利益第一主義ではなく、地域社会の利益を優先する。預かった資金は、その地域の発展に活かされる点が銀行との大きな違いである。
 自治体や地域団体などとの連携では▼産業振興やまちづくりで「包括連携に関する協定」の締結▼「認知症サポーター養成講座」の開催▼「よろず出張相談会」の開催▼特殊詐欺被害防止活動の実施―など、1年を通して地域に密着した活動を展開している。コロナ禍で中小企業の経営者からよく耳にしたのが「同じ目線で話ができる」ということだった。
 とはいえ、地銀再編が騒がれるなど先行き不安な話題が多かった「なんぎん」で親しまれている南都銀行も、地方経済を支える地銀の価値が再評価されているのも確かだ。コロナ禍で金融庁などの支援を受けながら、積極的な資金融資を行い、倒産を回避させたケースもあるという。
 「やましん」は今年度から新3カ年計画「やましん『支援力の強化と変革への挑戦』2021~課題解決による地域経済の力強い回復を目指して~」を掲げた。同じく「ちゅうしん」も第11次3カ年計画『ちゅうしんサポート力強化と変革への挑戦』へと意気込む。「ならしん」は『Face it』を今年度のテーマに据え、全ての役職員が課題に正面から向き合う組織を目指す。
 3信金のそれぞれのスローガンから、より健全で積極的な取り組みが伝わる。こまめに顧客を回る営業スタイルは、信用金庫には定着している。地域での存在感・ブランド力を発揮していくことはもちろん、経営に持続可能な開発目標(SDGs)の視点を大いに取り込んでいってほしいものだ。
menu
information