奈良県内の政治経済情報を深掘

2021.4.19掲載  社説「時々刻々」

女性の政治参画ハードル高く 議員報酬増も検討必要

論説委員 染谷和則

 スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が昨年まとめた「世界ジェンダーギャップ報告書」は、教育、健康、経済参画、政治参画の4分野で男女の格差を指数化している、153の国(地域)を対象に行われた同調査でわが国日本は総合順位121位で、前回調査の110位より後退。特に政治分野だけで見ると144位と、非常に低い評価がされている。
 現在、衆院の議席のうち女性の比率は9・9%、参院は同22・6%、全国の都道府県議会は同11・4%、市区町村議会は同14・6%になっている。本紙が今号で詳報したように、奈良県議会、県内市町村議会の女性の参画率は、これら全国平均より低くなっている。  県内の調査で興味深いデータが、県議会、村議会の女性比率が低いということ。一般的に政党に所属して広域的な政治活動や選挙活動を行う県議会への挑戦は、地方議会の中、最も厳しく、激しい選挙になる。ここへの女性参画は現在、立憲民主党、公明党、共産党のみ。広域的な活動に対し、まだまだ女性の参画にはハードルが高い課題があると推測される。
 一方、少子高齢化の問題に直面する村議会は、女性の参画率が低く、県内15村のうち13村で女性議員がいない状況になっている。現職議員の高齢化、多選化が進み、女性だけではなく、村議会の次世代の担い手不足が指摘されている。
 官公庁、役所が女性管理職の比率を高める施策を展開している。これらについては比率を高めることありきで、「能力に応じて考えるべきもの」との声や指摘もあるが、直接選挙で選ばれる議員は本来、男女差などない。しかしながら挑戦するための環境整備が追いついていない。
 地方議会では、幾度となく定数の減や報酬の減が議論されたきた。有能で資質のある人物の政治参画は、定数の減で精査されていくが、報酬減を続けることは、有能な女性の政治参画をより遠ざける可能性もある。
 一部を除き、県内ほとんどの市町村で人口が減少する中、定数や報酬の適正化をすることは重要だが、若者の政治参画や、出産や子育てがある女性の政治参画が難しくなる。これらの層の参画を促すための観点を持った議論が必要になる。いっそのこと報酬を増やす検討も必要ではないか。
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