奈良県内の政治経済情報を深掘

2021.3.29掲載  社説「時々刻々」

超高齢化、老朽化する公共施設「2040年問題」 現役世代の声を政治へく

論説委員 染谷和則

 総務省は3月31日、「地域の未来予測に関する検討ワーキンググループ」(座長=伊藤正次・東京都立大学法学部法学科教授)の報告書を公表した。報告書の中には「我が国全体の人口構造は2040年ごろにかけて大きく変容し、毎年約90万人の人口が減少するようになる」と指摘している。去年に生まれた子どもが成人するころ、超高齢化、人口減少がとてつもないスピードで加速する。
 このころ、介護需要が高まる85歳以上の人口は2015年と比較して倍の1000万人になるそうだ。このワーキンググループは、人口構造の大きな変化による公共施設の過多や、老朽化、更新需要などのインフラ整備が高まる一方、税収減、商圏人口の縮小に伴う「ギャップ」がさまざまな分野で生じるとしている。
 県内に目を向けると現在、市役所庁舎の建て替えや耐震工事ラッシュだ。また「奈良モデル」として、人口減少や公務員数の減少なども想定して、公の事務の効率化を進めている。そこで注目が集まるのが県域水道一元化だろう。
 県は28の市町村に向け、県営水道施設を活用した統一料金(187円)を進めようとしている。ほとんどの市町村で水道事業の会計が厳しい中、参加を表明している奈良市は人口が多いスケールメリットを活かした健全な経営が続いている。
 大型ダム施設や水管など、奈良市がこの枠組みに参加せねば、県域水道一元化のメリットが出ない。しかし奈良市は参加することで将来30%ほど現行料金より高くなる可能性がある。奈良市長選、市議選が刻一刻と近づく中、一元化参加の是非の議論が高まってきている。
 超高齢化社会による医療、福祉の予算の膨張、既存の公共施設の老朽化による社会基盤への投資…。これらは現役世代やまたその次の世代に〝負担〟が来る。しかしながら、この世代の投票率は低く、政治や行政への無関心さは周知の通り。
 この国を支え続けてくれた高齢者に最大の敬意を払いつつも、自分の世代に必要な施策、またその子たちに必要な施策を求め、その代表を国会や地方議会に送らねば、選挙の構造上、ここへの予算配分や投資は後回し。
 意思を投じなければ変えられない。1人でも多く若い人たちが政治や行政に関心を向けてもらいたい。
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