奈良県内の政治経済情報を深掘

2021.3.1掲載  社説「時々刻々」

もう一つのコロナ禍の変化 デジタル化戦略まっしぐら

論説委員 寺前伊平

  新型コロナウイルス感染症がうごめきたってからほぼ1年が経つ。1年間で変化したことの中でも印象深いのは、デジタル化へ大きく舵がとられたことではないだろうか。
 IT(情報技術)基本法の見直し、デジタル庁の設置など、国がデジタル化に旗を振り出したことに始まる。もともと他の先進国と比べても、遅れをとっていた分野ではあるものの、新型コロナ禍で屋内からの遠隔地へのオンライン会議が急速に広まった事が影響する。
 奈良県は新年度から、行政、家庭、経済の3分野について、県内地域デジタル化の在り方を具体的に検討し、「(仮称)奈良県地域デジタル化戦略」として取りまとめる。県は新年度から総務部のICT(情報通信技術)推進課を「デジタル戦略課」に改組し、旗振り役を担うことになる。
 県はこれまで、南和地域で高齢者が使い慣れた「電話」と「AI(人工頭脳)」を活用した見守り、介護予防などの支援システム構築に向け、実証実験を進めている。また、紙でやりとりしていた病院内業務や医療機関間の情報連携を推進する。
 他にも、中小企業のデジタル化の実態調査や障害者のテレワークの促進、県中央卸売市場施設の業務統合管理システムの導入も検討。さらに、教育面では安全な通学路を確保するため、防犯、防災などの情報を盛り込んだ全通学園路マップのデジタル化を図る。
 小子は活字慣れしてきたせいか「画面より紙の方がじっくり読むことができ、紙の手触りとともに内容が頭に入りやすい」ことが抜けきれないでいることを白状したいが、こうしたデジタル化の動きには驚くしかない。
 文部科学省は新年度から行う全国的な実証事業をふまえて、今度はデジタル教科書の無償化に本格導入する段階にきているというのだ。必要な情報を取り出したり、表面的で単純な作業に適しており、それに分かりやすい動画挿入も可能だ。
 現在、小中学校などでは紙の教科書だけが無償配布されている。デジタル教科書は、紙と同じ内容を端末に表示したもので、すでに令和元(2019)年度から授業で使える教材となっている。現に紙とデジタルを組み合わせた指導法を模索している学校もあるという。
 県は、マイナンバーカードの普及に取り組む市町村を支援し、来年度中にマイナンバーカード普及率を100%に。このことで、住民票など県内コンビニ交付サービス利用可能人口も95%以上にするという。スピード感のある動きが続くことには変わりはない。 
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