奈良県内の政治経済情報を深掘

2021.2.8掲載  社説「時々刻々」

各市でふるさと納税額が増加 受動的な好調に課題点

論説委員 染谷和則

 県内各市のふるさと納税が好調という。新型コロナウイルスの感染拡大、政府の緊急事態宣言の期間延長、景気の後退感など、悪い話ばかりを耳にする中、少しばかりは明るい話題。県内各市町村の返礼品に携わっている業者や人々が潤うよう、行政にはさらなるPRや努力を求めたいところだ。
 新型コロナによる外食や外出そのものの自粛を受け、さまざまな業種や消費者が知恵と工夫を凝らしている。このふるさと納税も、消費が冷え込む中、また家で過ごす時間が増える中で、節税と返礼品という実利を得る工夫をしようという消費行動の工夫が垣間見える。また本紙記事にあるよう各市が創設した「新型コロナに打ち勝つ」という寄付の使途目的に対し、人々の善意や応援の意、願いも込められている。
 しかしながら各市を取材する中「自粛や新型コロナによる戦略を特に立てたわけではない」という回答が目立った。結果としてふるさと納税の獲得が好調になったということ。能動的な好調ではなく、あくまで受動的に享受したものだ。
 返礼品に携わる県内業者と手を携え、この困難を逆手に市場を伸ばそうという行政の努力や〝経営センス〟を感じるには至らない。ぜひとも、民間と共に知恵を絞ってさらに寄付金を集め、寄せられた財源を再び地域に使える仕組みを考えてもらいたい。
 期間が延長される緊急事態宣言を受けて民衆のフラストレーションは爆発寸前。国会議員の飲食などには有権者の批判の矛先が向けられる。緊急事態宣言下の〝クラブ活動〟はもってのほか。自民党衆院県3区は揺れに揺れる。本人が離党をした以上、次期衆院選で自民党奈良県連は独自候補を擁立しなければ筋道がつかない。
 「他人事」「そのうち話題も忘れられるだろう」などと、政局と世論を見ながらのらりくらりしていては、ますます政治に対する不信感は募るばかり。筋道が通った選挙戦を用意し、有権者の信を仰ぐべきだ。
 お役所仕事も政治家の仕事も、もっと能動的に。ふるさと納税を活用しようとする市民の工夫、クラブ活動に怒り心頭の民衆、どちらもフラストレーションギリギリ、民の行動だ。抑え込まれたこれら民衆のエネルギーが噴火しない行政運営、政治活動を願う。
menu
information