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2021.2.1掲載  社説「時々刻々」

若年層の献血者減少傾向 献血予約を幅広い層から受付

論説委員 寺前伊平

 先月16日、小子の携帯電話に入った某氏からのSNSには「本年最初の献血は予約して行きました」とあり、どうやら血小板の成分献血のようだった。そして「体調を整えて、定期的に献血ができるようにすることが今年の目標です」と記されていた。
 新型コロナウイルスのことで、すっかり献血に行くことが頭から抜けていたことに、恥ずかしい思いがするのと同時に、某氏に脱帽した。医療機関に安定的に血液を供給するためには、輸血用の血液を十分に確保する必要があるからだ。
 日本赤十字社が血液事業を開始したのは、昭和27(1952)年4月から。現在、全国54の血液センターと172の付属施設で運営されている。奈良県内では、大和郡山市筒井町の県赤十字献血センターと近鉄奈良駅ビル6階にある「献血ルーム」がそれ。
 献血には400㍉㍑献血と成分献血があり、昨年1月から12月までの1年間に400㍉㍑献血に3万2083人(全献血者数4万9812人)の協力があった。とくに成分献血の需要が多かったという。
 献血をもとに造られる血液製剤は、国内自給が原則。有効期間が採血からわずか4日のものもある。輸血用血液製剤を使用している約85%が50歳以上で、逆に献血に協力している70%が50歳未満の人。この世代の人が輸血医療を大きく支えているともいえる。
 今年は新型コロナの最初の緊急事態宣言後の5、6月の2カ月、平日の企業、学校での集団献血が少なくなったことや土日祝日のイベントが中止となり、献血者が急減した経緯がある。在宅勤務の推進やオンライン授業の増加により献血バスの派遣中止も相次いだ。  そこで、厚労省は全国都道府県に献血会場をさらに確保するよう通知を出した。県内では前述の「センター」と「献血ルーム」以外に、イオンモールの3カ所(大和郡山、登美ヶ丘、橿原)に献血会場を確保。事前予約制により、「密」の回避や消毒・換気の徹底などの感染防止策をとっている。
 献血は16歳から可能だが、気になるのは10~30歳代の献血者が減少傾向にあることだ。献血には幅広い層からの協力が不可欠であるが、輸血用血液製剤はまだまだ足りない状態である。
 コロナ禍で、医療従事者は予期せぬ事態に対応を迫られている。県民全体で献血の重要性を共有し、「密」にならないように各会場に予約して献血に参加しようではないか。詳しくは、同センターのホームページで。
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