奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.11.30掲載  社説「時々刻々」

国のコロナ観光支援策を問う 感染者急増で明確な方針示せ

論説委員 寺前伊平

 国の観光支援策「GоTо トラベル」事業から大阪市、札幌市を目的地として、12月15日までに現地に到着する旅行を除外する、という政府の発表はどうも納得できない。 もちろん、同事業により両市での新型コロナウイルス感染症患者が急増していることへの措置だが、「我慢の3連休」の呼びかけはどこ吹く風。大阪、札幌に限らず全国どこかしこの行楽地は「人、ひと、ヒト」で込み合っていたようだ。 奈良県内においても、10月下旬ごろから感染者の増加傾向がみられる。今月24日時点では大和郡山市のクラスター(感染集団)を含めた15人が感染し、ついに感染者が1000人超え(1005人)となった。 感染第3波の余波ともとれる事態に、いつなんどき奈良市も両市のような措置が取られるか分からない。悠長にさみだれ式に物事に対応している時でもないだろう。各都道府県知事の決断に委ねられることも多いが、国が明確な方針を国民に打ち出すべきである。 飲食店支援事業「GоTо イート」もこれに追随し、ブレーキがかかるだろう。両市を例にした緊急措置による影響は計り知れない。経済、生活補償は当然のことである。感染者が急増し緊迫した状況にある。にも関わらず、西村康稔・経済再生相が今後の感染状況について聞かれ、「神のみぞ知る」とした発言は、無責任極まりない。 とくに、厚生労働省の助言機関が感染状況について、「過去最多の水準となっており、医療提供体制に重大な影響が生じる恐れがある」と発表した事にも顧みず、こうした発言である。西村大臣には猛省を促したい。 県内における入院病床の占有率(8日現在)は20%(入院対応可能数467床、占有者数93人)。患者1人に当たる医療従事者は複数にのぼり、働きづめの毎日が目に映る。この人たちの健康維持、報いるための補償確保は充分なのだろうか。 全国知事会が最近出した調査結果によれば、自治体が新型コロナ対策に充てる総額3兆円の地方創生臨時交付金に関し、47都道府県の不足額が計6134億円に上るという。感染再拡大が懸念される中、厳しさを増す自治体財政への危機感が浮き彫りとなった。 何か事あるごとに〝緊急出動〟する国庫金。前もって政策的経費をまとまって借金しておくぐらいの度量がいる。「赤字という国債は、自国通貨の『円』をいくらでも発行可能で、日本の財政が破綻しない」というMMT(現代貨幣理論)に学ぶところがあるのでは。
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