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2020.7.27掲載 社説「時々刻々」
欠陥施策の「Go To トラベル」 感染拡大に向かうのか
論説委員 染谷和則
政府の推進する国内旅行需要を喚起する「Go To トラベル」が22日から見切り発車した。新型コロナウイルスの第二波が、東京都を中心に猛威を振るう中、この施策は諸手を挙げて歓迎できない。
感染者が増加している東京都は除外されたものの、補助対象となる個人旅行で奈良から千葉に行き、補助対象にはならないが、千葉から〝こっそり〟東京へ行くことは可能など、抜け道だらけの施策になる。
都心部、また奈良をはじめ、その衛星都市で新型コロナの感染者数が増加し、若年層の外出から病院などでもクラスターが発生している中、心情的には「行くのも」「来られるのも」ご遠慮願いたい。今、絶対すべき施策だと多くの人が思えないだろう。
管轄する赤羽一嘉国土交通相は、この「Go To トラベル」について「高齢者や若者の団体旅行は控えてもらうことが望ましい」と発言。果たしてどの年齢層の誰が行くのか。国民の血税を投じてやるべき事業なのか。「新型コロナ終息後」としていた閣議決定は何だったのか―。制度の不備や大義名分など、挙げればきりがない欠陥事業と断じていい。将来〝まともな国〟であれば、近代の歴史を学ぶ教科書に必ず掲載されるだろう。
日本のGDPに占める旅行消費額の割合は観光庁によるとたかだか4%強ほどしかない。宿泊施設や飲食業をはじめ、大打撃を受けた新型コロナだが、他産業でも大きなダメージがある。昼夜を問わず命を預かる医療機関でも夏季ボーナスが大幅にカットされている。この空気、この雰囲気で補助金をバラまき、旅行を推進するとは…。
スタートしてしまったこの事業、県内の宿泊施設に聞くと「業界としては収入になるありがたい話だが、人目が…」とこぼす。聡明な読者の皆さまには、この事業の補助金をいただき、他府県にお金を落としに行くのでなく、ぜひとも機会を見て県内観光の消費、内需の経済を回すようにしていただきたい。そういったお金の回し方で、まだ知らない奈良の魅力に触れ、学ぶ。それら新発見がきっとあるはずだ。
感染症の専門家らが爆発的な感染拡大に警鐘を鳴らす「Go To トラベル」。いったいこの国はどこへ向かっているのか―。
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欠陥施策の「Go To トラベル」 感染拡大に向かうのか
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感染者が増加している東京都は除外されたものの、補助対象となる個人旅行で奈良から千葉に行き、補助対象にはならないが、千葉から〝こっそり〟東京へ行くことは可能など、抜け道だらけの施策になる。
都心部、また奈良をはじめ、その衛星都市で新型コロナの感染者数が増加し、若年層の外出から病院などでもクラスターが発生している中、心情的には「行くのも」「来られるのも」ご遠慮願いたい。今、絶対すべき施策だと多くの人が思えないだろう。
管轄する赤羽一嘉国土交通相は、この「Go To トラベル」について「高齢者や若者の団体旅行は控えてもらうことが望ましい」と発言。果たしてどの年齢層の誰が行くのか。国民の血税を投じてやるべき事業なのか。「新型コロナ終息後」としていた閣議決定は何だったのか―。制度の不備や大義名分など、挙げればきりがない欠陥事業と断じていい。将来〝まともな国〟であれば、近代の歴史を学ぶ教科書に必ず掲載されるだろう。
日本のGDPに占める旅行消費額の割合は観光庁によるとたかだか4%強ほどしかない。宿泊施設や飲食業をはじめ、大打撃を受けた新型コロナだが、他産業でも大きなダメージがある。昼夜を問わず命を預かる医療機関でも夏季ボーナスが大幅にカットされている。この空気、この雰囲気で補助金をバラまき、旅行を推進するとは…。
スタートしてしまったこの事業、県内の宿泊施設に聞くと「業界としては収入になるありがたい話だが、人目が…」とこぼす。聡明な読者の皆さまには、この事業の補助金をいただき、他府県にお金を落としに行くのでなく、ぜひとも機会を見て県内観光の消費、内需の経済を回すようにしていただきたい。そういったお金の回し方で、まだ知らない奈良の魅力に触れ、学ぶ。それら新発見がきっとあるはずだ。
感染症の専門家らが爆発的な感染拡大に警鐘を鳴らす「Go To トラベル」。いったいこの国はどこへ向かっているのか―。