奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.7.20掲載  社説「時々刻々」

国勢調査100年に思う 今こそ地方が存在感を示す時

論説委員 寺前伊平

 今年は大正9(1920)年に最初の国勢調査が始まって100年目の節目を迎え、21回目を数える。調査は10月1日現在、日本国内に普段住んでいる全ての人(外国人を含む)と世帯を対象に実施する。
 9月中に調査員が各世帯を訪問し、調査書類を配布する。世帯員についての項目は男女の別、出生の年月、配偶者の有無、就業状態、従業地または通学地―など15項目。世帯については世帯員の数、世帯の種類、住居の種類、住居の建て方―の4項目。回答は10月初めに回収する。オンライン(インターネット)回答も可能だ。
 奈良スタットジャーナルVol.5によると、第1回調査で56万5607人だった奈良県の人口が、昭和40(1965)年の第10回調査時点では82万5965人に。昭和48(1973)年にはついに100万人を突破し、102万8127人に達した。平成11(1999)年に144万9138人と県人口のピークを迎えたものの、第20回調査時点の平成27(2015)には136万4316人と減少傾向に拍車がかかってきている。
 このまま推移すると、令和27(2045)年の推計人口は100万人を下回って99万8076人まで落ち込むという。人口ピラミッドで表現すれば、▼大正9年時が「富士山型」▼昭和40年時は「釣り鐘型」▼平成27年が「つぼ型」▼令和27年が「聖火型」となる。少子高齢化の波はとどまらず、人口減は避けられない。とくに、15歳未満の県人口に絞ると、昭和60(1985)年をピークに年々減少し続けている。子どもたちが伸び伸び育つことを最優先した生活様式に変えることができないものか。
 そんな問いかけに、吉野郡川上村が答えを出した。平成25(2013)年時に15歳以下の子どもの数が57人だったのが、令和2年の今年は69人と2割増加の状況。仕事場、住む所、子育て支援、教育環境―の4点をワンセットにして懇切丁寧に相談にのった成果が、Iターン、Uターン現象を生み出しているという。
 今回の「コロナ禍」や大災害で見えてきたのは、一極集中を避けようとする動きである。人口だけではない。経済の大きさだけでもない。一極集中の東京の対極にある価値はなんだろうかと考えた時、地方の人の温もりであったり、大自然での営みであったりはしないだろうか。
 「地方がしっかり主張し、地方が存在感を示していくことが、国の底力につながる」と話す栗山忠昭同村長の言葉には重みがある。
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