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2020.6.15掲載  社説「時々刻々」

反対派態度一変、3度目で百条委設置か 議場に送る政治家の見極めを

論説委員 染谷和則

 入札で便宜を図り、その見返りとして県内事務用品卸会社の元役員から計約160万円の小切手を受け取ったとして、あっせん収賄で五條市議の牧野雅一容疑者(57)が県警に逮捕された。官製談合事件の金品の流れの氷山の一角…。まだまだ公金をはじめ不正に使われた全容は見えない。これを明らかにすべく、開会中の五條市議会6月定例会に百条委員会の設置が提案される見通しになった。2度の否決を受けて3度目の提案になる。
 1度目の否決時、逮捕前の牧野容疑者も採決の場にいた。開会前の水面下の調整で〝お仲間議員〟らが加わり、否決されることがわかっていた牧野容疑者は飄々(ひょうひょう)とした態度で議場に姿を見せた。採決の結果は賛成5人、反対6人。五條市議会は全容解明に向け、消極的な態度になった。
 2度目は牧野容疑者が逮捕され、議場には出席できない状況での採決。ここでも設置反対派は「今は新型コロナに全力を」「今は設置すべき時ではない」など、耳を疑う討論を行った。採決の結果、賛成5人、反対5人の同数。吉田雅範議長が権限で否決と判断を下し、議場の市民からは怒号も飛ぶ混乱した様相を見せた。
 あっせん収賄で3度目の逮捕になった牧野容疑者は、特定の製造元の製品を使うよう便宜を図り、見返りを受け取った。もはや適正な競争原理がはたらかなかった数々の入札で私利私欲の輩にいくらの公金が食われたのかはわからない。それらを批判する世論を受けて、反対派の一部が一転、3度目の提案は賛成に回ろうとしている動きがあり、全容解明へようやくギアが入る見通しだ。
 昨年11月からこの官製談合事件を追いかけてきた本紙は、12月23日の小欄に「百条委設置は本気度の〝踏絵〟」と書いた。当初から百条委設置を訴える議員と、2度の反対・否決から一転して賛成に回る議員らに対し、次期市議選で有権者はどんな審判をするか―。
 その判断の一つとして、この3度目の百条委設置に対する各議員の態度には注目が集まる。市民の代表の議員と、いつの間にかそうではなくなってしまっている議員を見分ける「真贋の目」を有権者が持たねば、またもやいらぬ輩を本会議場に送ってしまうことになる。
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